破壊の3層構造――変わりゆくゲームのルール

カーマゲドンの破壊性を真に理解するためには、EV化というハードウェアの変化だけでなく、その奥深くで進行している、より本質的な3層構造の地殻変動に目を向けなければならない(図表5)。

【図表5】自動車産業の創造的破壊の3層構造
出所=『Ei革命』(集英社インターナショナル)
第1層:EV化――ハードウェアと製造プロセスの革命

EV化は、単に動力源をエンジンからモーターとバッテリーに変えるだけではない。それは、自動車の設計思想と製造プロセスそのものを根底から覆す革命である。その急先鋒が、テスラであり、テスラを猛追し一部では凌駕しつつある中国のEVメーカー群だ。

彼らが主導する製造プロセスの革新の代表例が、一体成型技術である「ギガキャスティング」だ。これはテスラが創発し2020年の上海工場で最初に導入した技術で、従来は多数の鋼板部品を溶接して組み立てていた車体後部(あるいは前部)を、巨大なアルミダイキャストマシンで一気に成型する技術である。これにより、部品点数と製造工程が劇的に削減され、コストダウン、生産スピードの向上、車体剛性の強化、軽量化を同時に実現する。

テスラが覆した「自動車の常識」

さらにテスラは、製造工程を根本から見直す「アンボックスド製法」を提唱している。これは、従来のベルトコンベア式の組み立てラインを廃し、車の主要ブロック(前後ボディ、フロアバッテリーなど)を並行して組み立て、最後にそれらを合体させるという、モジュール式の生産方式である。この製法は、工場の設置面積を大幅に縮小し、生産効率を飛躍的に高めるポテンシャルを秘めている。その他、ヒートポンプ、蓄電池の構造体一体化、48Vシステム、イーサネット通信などテスラが生み出した革新は数多い。

これらの革新は、100年間ほとんど変わらなかった自動車の大量生産方式の常識を覆すものであり、既存のサプライチェーンや工場設備を持つレガシーメーカーにとっては、模倣が極めて困難な、高い参入障壁となっている。