「毎年やるもの」という謎の前提
春になると、多くの小中学校で体力テストが行われる。50メートル走、反復横跳び、握力、長座体前屈など、測定項目は全国的にほぼ共通しており、毎年同じような形で実施されている。秋頃に、その結果(A~Eの5段階で総合評価、前年との比較など)が子どもたちに返却される。
しかし、この恒例の測定イベントは、果たして子どもの成長に結びついているのか。
子どもは結果を周囲の子と比べて「自分はダメだ」と感じたり、保護者も「運動が苦手なのかもしれない」と不安を抱いたりすることがある。発達差の大きい時期に、一律の基準で数値化・比較されることで、運動そのものへの苦手意識につながる可能性もある。
特に小中学生は、体の成長度合の個人差が大きい。各テストの結果は、例えば長座体前屈は本来柔軟性を見る種目であるはずが、単に身長によって差が生じやすい。しかし、体格差への配慮は皆無である。つまり、同級生を一律の基準で判定するのみで、各児童・生徒の運動能力を正しく評価しているかどうか疑わしい。
長期間維持されている測定の枠組み
現在実施されている体力テストは、文部科学省による「新体力テスト」として1998年に導入されたものである。導入から四半世紀以上が経過しているが、測定項目の基本的な構造は大きく変わっていない。
社会環境や子どもを取り巻く状況が大きく変化する中で、同一の枠組みが長期間維持されているという事実は、それ自体として一つの特徴といえる。
データは蓄積されているが、活用は限定的
文科省の調査においても、子どもの体力水準は長期的には回復傾向が見られるものの、地域差や生活習慣との関連が指摘されている。体力テストは全国的に実施されており、長年にわたり継続的なデータ収集が行われている。子どもの体力の傾向や変化を把握するという点では、一定の役割を果たしてきた。
一方で、現場では前述した課題・問題点のほかこうした声も聞かれる。
・測定はするが、その結果が個別の指導に十分活かされていない。
・記録は残るが、日常の運動習慣にはつながらない。
・測定と指導のあいだに、距離がある。



