※本稿は、木村草太『憲法の学校 親権、校則、いじめ、PTA――「子どものため」を考える』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
トラブルは「法令遵守」で解消
PTAは、保護者(Parent)と教職員(Teacher)からなるボランティア団体(Association)である。多くの学校では、その学校に通う子どもの保護者からなる学校単位のPTA(PTAの連合体と区別するため、単位PTAと呼ばれることもある)が組織されている。戦後、GHQによりアメリカのPTA活動が紹介され、日本にも広まった。本国アメリカのPTAは、ボランティア活動であり、活動の意思を持つ者が自発的に参加する活動だという。
他方、日本のPTAでは、子どもが入学すると、保護者が自動的にPTA会員とみなされることが多かった。学校によっては、給食費の自動引落口座を設定すると、同意もしていないのに、給食費と同時にPTA会費が引き落とされる。入学式終了後、PTAが新入生の保護者を体育館に閉じ込め、役員を選ぶよう強要することもある。
加入後は、役員会議やベルマーク活動、地域の見回り等に駆り出される。同意もないのに、会費や労役を強要すれば、トラブルが発生するのも当然だろう。こうしたトラブルを解消するために何が必要か。答えは驚くほど単純である。PTAと学校が法令を遵守すればよい。本節では、PTAの法的位置づけを整理し、現在起きているトラブルに、どう対応すべきかを提示したい。
PTAの法的性質を正しく理解するには、次の3つの観点が重要である。
「PTA加入」を義務付ける法律は存在しない
(1)任意加入団体としてのPTA
第一に、憲法21条1項は、何人に対しても結社の自由を保障している。結社の自由には、団体を形成する自由(結社する自由)の他、団体に加入しない自由(結社しない自由)も含まれる。このため、国家といえども、法律の根拠なしに、個人に対してPTA加入を強制してはならない。
また、結社しない自由を制約する法律は、厳格な違憲審査基準をパスしない限り違憲となる。弁護士会や司法書士会と異なり、PTAには加入を強制できるほどの公共的価値は認めがたいから、PTA加入強制法が制定されても当然、違憲無効だろう。
このため、保護者に対してPTA加入を義務付ける法律は存在しない。従って、PTAは、その活動や規約の内容にかかわらず、すべて任意加入団体ということになる。「すべての保護者はPTA会員である」と書かれた規約があっても、法的には無意味である。
任意加入団体では、入会を希望する者が申込を行い、団体側がそれを承認することで入会が法的に成立する。PTAの場合も、入会申込をした者が会員となる。この点、入会申込書を提出させない運営は違法ではないと言う声も聴かれる。