日本が「世界の潮流」から隔絶されたワケ

この世界的な潮流の中で、日本の立ち遅れは危機的といえるほど深刻である。2024年時点での新車販売台数に占めるEV比率は、わずか3%、バッテリーEV(BEV)に限ると1%台に過ぎない。

これは、EVシフトを牽引するノルウェー(97%)は言うに及ばず、世界の主要市場である中国(47%)、欧州(24%)、米国(11%)はもちろんのこと、ベトナム(22%)やタイ(18%)など新興国と比較しても、絶望的といえるほどの低水準である(図表3、図表4)。日本の自動車市場は、世界の現実から完全に隔絶された「EVガラパゴス」と化しており、その内部では未だにICE車が主流であるという、特異な状況が続いている。

【図表3】新車販売台数に占めるEV(BEV+PHEV)比率(世界主要地域・国)
出所=『Ei革命』(集英社インターナショナル)
【図表4】新車販売台数に占めるEV(BEV+PHEV)比率(新興国)
出所=『Ei革命』(集英社インターナショナル)

この立ち遅れの背景には、複合的な要因が存在する。

充電インフラの不足と利便性の懸念

マンションなどの集合住宅が多く、戸建て中心の欧米に比べて基礎充電環境の整備が遅れている。公共の急速充電器の数や出力も不十分であり、消費者の「充電切れ」に対する不安を払拭できていない。

急速な技術進展に立ち遅れた急速充電インフラ

日本の急速充電インフラの規格CHAdeMOは、三菱や日産が2010年前後という早期に実用EV車を発売したことと相まって、一時期は世界の標準規格を目指していた。ところがほぼ同時期にテスラが高性能のEVと高出力・デジタル化・優れたUXの急速充電インフラネットワークを自前で整備。そのなかで、充電性能も充電利便性もEV自体の性能も追いつけないまま、日本車のEV性能もEV充電インフラも旧い規格・性能のまま停滞してしまい、それがEVに対するネガティブな印象を強化する原因にもなった。

政府・メーカーの戦略の迷走

日本政府や国内自動車メーカーは、長らくハイブリッド車(HV)や水素燃料電池車(FCV)を重視する戦略を掲げ、世界的なEVシフトの潮流を静観、あるいは軽視してきた。その結果、EV専用プラットフォームの開発や大規模なバッテリー生産体制の構築で大きく出遅れた。

消費者マインドとメディア報道

メディアではEVに対するネガティブな側面(航続距離、充電時間、バッテリー劣化、電力供給への懸念など)が強調される傾向があり、消費者の間に慎重な空気が醸成されている。

電力事情への不安

原子力発電所の稼働停止以降、日本の電力供給体制は脆弱性を抱えており、EVの普及が電力需給を逼迫するのではないかという懸念も根強い。

これらの要因が複雑に絡み合い、日本のEVシフトを阻害する強固な岩盤を形成しているのである。