クルマは「自律的に移動するロボット」へ

第3層:AI自動運転化――モビリティのChatGPTモーメント

破壊の最終層にして、最も社会に与えるインパクトが大きいのが、AIによる完全自動運転(FSD)技術の確立である。これが実現したとき、自動車は単なる人の運転を前提とした移動手段から、自律的に移動するロボット、すなわちロボタクシーへと変貌を遂げる。

この分野で他社を圧倒的にリードしているのが、やはりテスラである。テスラのアプローチが革新的なのは、LiDAR(レーザーセンサー)という高価な外部センサーや多大な労力と時間、費用を要する高精度3次元地図(3Dマップ)などに依存する従来の自動運転手法とは一線を画し、人間が運転するのと同じように、カメラ映像(ビジョン)のみを入力情報として、AIのニューラルネットワークが状況判断から操作までを一貫して行う「ビジョンベース・AIエンドツーエンド」方式を採用している点にある。

そのため、自動運転の商用化で先行するウェイモが3Dマップの整備に時間を要する一方で、テスラは、一気に拡張が可能である(図表6)。規制が認めれば、テスラは今日からでも世界中、どこでも自動運転が可能となる。

【図表6】ウェイモと比較したテスラの自動運転エリアの拡張スピード(時系列)
出所=『Ei革命』(集英社インターナショナル)

2025年、AI自動運転「ロボタクシー」が始動

この方式の最大の強みは、世界中で実際に走行している800万台以上のテスラ車から、膨大な実走行データを収集し、AIの学習データとして活用できることだ。このデータ収集と学習のループが、他社には追随不可能なスピードで自動運転技術の精度を飛躍的に向上させている。

Ei革命
飯田哲也『Ei革命』(集英社インターナショナル)

この技術が成熟した先に生み出されるのが、「ロボタクシー」である。人の運転を必要としない完全自動運転のタクシーが実現すれば、移動コストは劇的に低下し、人々は車を「所有」する必要がなくなるかもしれない。それは、自動車が個人所有物から、誰もがオンデマンドで利用できるサービスへと変貌することを意味し、都市の交通システム、不動産の価値、個人のライフスタイル、さらには保険や運輸といった関連産業のあり方まで、社会の隅々にまで破壊的な影響を及ぼすだろう。

テスラは、2025年6月にテキサス州オースティン市で、このロボタクシーの商用サービスを開始した。この出来事は、モビリティの世界における「ChatGPTモーメント」として、後世に記憶されることになるだろう。生成AIであるChatGPTの登場が、人々の働き方や情報との関わり方を一変させつつあるように、AI自動運転を核とするロボタクシーは、私たちの移動と生活の概念そのものを覆すほどのインパクトを持つと予測される。