その緊張は、自分を“過大評価”している証

緊張とは、心拍が速くなったり、身体がこわばったり、手汗をかいたりするなど、おもに身体的な反応を指します。ただ「緊張してドキドキした」と言うように、身体反応以前の精神的な状態も表します。

「感情」の研究には“次元論”という分野があるそうです。それによると、緊張は、ワクワクする快さと同じレベルの明瞭な覚醒状態ですが、不快の領域に分類されます。

もちろん、緊張は悪いことばかりではありません。舞台に立つ役者や会社での企画のプレゼンテーション、芸事の発表会などを何度も経験している人はみな、「緊張するのは集中するという意味で悪いことではない」と言います。

私も人前で話をする時にドキドキしていたことがありましたが、大先輩に「ドキドキは心の応援団の拍手の音だ」と言われて共感しました。

それ以来、適度な緊張を楽しみながら勤めを果たせるようになりました。どんなに緊張しても「あと二時間すれば終わっている」と思えるようになり、緊張を楽しめるようになったのです。

むしろ最近は、何かに臨む際、ある程度緊張していないと、特に相手がいる場合はかえって失礼に当たるとさえ感じます。

ところが、緊張と似た感情でありながら、プレッシャーは少し話が違ってきます。

プレッシャーとは、心理的・精神的な抑圧感を指します。私の経験では、自分の能力以上のことを相手から求められているような気がして、それに応えられるかわからない不安や自信のなさから来る緊張状態のことです。

失敗した時に出る自分の本性を磨いておく

初めての職場環境、オーディション、デート、講演など、「今回失敗すると次に挽回するチャンスがない」といった、最初で最後のような切羽詰まった状況に直面した時に、人はプレッシャーを感じます。

相手がこちらの能力以上のものを求めていると勝手に思い込み、プレッシャーを感じるのは、「自分ならやれるだろう」と自分自身を過大評価している証拠です。

実際には、相手は「まあ、やれるだけやってみて」くらいにしか期待していないことが多いものです。実力以上のものは出ませんから、やれるだけやると割り切るしかありません。

「でも失敗したら、二度と声がかからないかも」とさらに自分にプレッシャーをかけがちですが、そんな時は失敗した時に出る自分の本性を磨いておくしかありません。

オフィスで佇むビジネスマン
写真=iStock.com/FG Trade
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昭和の時代、放送局のアナウンサー採用試験の最終審査では、審査員は失敗した時の対応を見ていたそうです。人は失敗した時にこそ本性が出ます。失敗してしかめ面になり、その場を凍りつかせたり、雰囲気を悪くしたりする人は不採用になります。

採用されるのは、失敗しても周囲を明るくできる人です。番組編成の時期になると、民放各局でアナウンサーのハプニング特集が放送され、私たちを大いに笑わせてくれますが、それはそのようにして選ばれた本性が明るい人たちだからでしょう。

ですから、過度なプレッシャーを感じても、失敗した時に前向きになれるよう日頃から自分磨きをしておけばいいのです。