「正しいやり方」なんて、どこにもない
このセリフでは、「私のやり方」を引き出すために「正しいやり方」と「間違ったやり方」が前置きされます。
ところが、世の中には、だれが何と言おうと絶対に正しいやり方も、いつの時代、どんな場所でも必ず間違っているやり方も存在しません。
それは、あらゆる作られたものは同じ状態を保てないという「諸行無常の法則」に逆らえないからです。改めて簡単に振り返りましょう。
多くの縁が集まると、一つの結果が生まれます(縁起の法則)。この集まる縁は、時間が経過するという縁をはじめ、人の価値観や社会のあり方なども次々に変化していきます。
そのため、結果も変わりつづけ、同じ状態を保つことはありません。これが世界を貫く諸行無常というあり方です。
ですから、「正しいやり方」はいつまでも正しいやり方ではなく、「間違ったやり方」も永遠に間違ったやり方ではないと言えます。
実際、昔は正しいと思われていたやり方が、今では誤りだったということはよくあります。
逆に、昔は間違っていると考えられていたことが、じつは正しかったということもあります。
これは、反証可能性を特徴とする科学の世界で顕著です。間違いが指摘、証明されるまでの暫定的な理論で成り立っているのが科学だからです。
「みんな自分勝手」なので気にしない
しかし、他にも会社運営、育児方法、ゲームの攻略法に至るまで、「正しいと思われていたことがじつは間違っていた」という事態は、その逆も含めて、ガンジス川の砂の数ほど起こります。
ですから、映画の中で主人公役のデ・ニーロが言った「正しいやり方」も「間違ったやり方」も、不変ではないのです。
残るのは、「俺のやり方」です。他にも「やり方」があるかもしれませんが、みんな自分勝手なやり方をしている状況を納得するには、「みんなが『自分のやり方』をしている」と考えれば十分です。
ここで加えておきたいのは、「みんなが自分勝手なやり方をしているのだから、自分も自分勝手なやり方でいい」と開き直らないほうがいいということです。
結果的に、だれもが自分のやり方が正しいと信じてやっています。それに異議を唱えて、「あなたは間違っている」と熊ゼミの鳴き声なみの声で世界の真ん中で叫んだとしても、何の解決にもなりません。
「みんな自分勝手だ」を「だれしもが自分のやり方しかできない」と考えてみてください。そうすれば、自分と違うやり方に寄り添う余裕が生まれ、心おだやかな時間が確実に増えていくことでしょう。

