食のファスト化が進んでいる

サン・セバスチャンのピンチョスバーで供される一皿のアンチョビは、ただのアンチョビではない。

バスク海岸で揚がったカンタブリア海のアンチョビを、代々受け継がれた塩漬け技法で仕込み、バスク地方特有の調理哲学――「素材の声を聴く」という、ヌエバ・コシーナ・バスカ(新バスク料理)の精神――に基づいて一皿に仕立てたものだ。

アンチョビのタパス
写真=iStock.com/Eva-Katalin
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その背後には、1970年代にスペインの独裁政権が終焉し、バスクのアイデンティティ回復運動の中でシェフたちが「レシピのオープンソース化」という革命的な決断を下した歴史が流れている。