スマートウォッチなどでも測定できる「心拍変動」

心拍変動(HRV:Heart rate variability)とは、心拍と心拍の間の時間間隔の変化を解析した指標で、心電図や心拍センサー付きウェアラブルデバイスなどから測定されます。近年はスマートウォッチなどでも簡易的に測定でき、自律神経の状態を客観的に把握する指標として研究や健康管理の分野で広く用いられていますMcCraty and Shaffer, 2015

HRVの低下は、自律神経の調節力(アクセルとブレーキをうまく切り替える力)の低下を示すものと考えられており、実際、短時間睡眠や長時間労働ではHRVが約10%前後低下し、アルコール摂取後には夜間のHRVが10~20%低下することが示されています。

さらに、HRVの低下は強い疲労感や抑うつ、不安、いら立ちといった心理的ストレス反応と関連があることも報告されており、こうした状態は、比喩的に「自律神経の疲れ」と表現されることもありますOkawa et al., 2019

オフィスでコンピュータの前に座っている疲れたビジネスパーソン
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集中力や判断力が落ち、イライラしやすくなる

自律神経の調節力が低下した状態が続くと、当然仕事へも影響が表れます。

まず「朝から体が重い」「休んでも疲れが抜けない」と感じやすくなります。夜間に副交感神経が十分に働かないと、睡眠中も心身が完全な休息モードに切り替わらず、回復が不十分になりやすいためですOliver et al., 2019。日本人を対象とした研究でも、自律神経機能の低下と主観的疲労感の関連が報告されていますTanaka et al., 2011

それだけでなく、集中力や判断力にも変化が表れます。交感神経優位の状態が長く続くと自律神経の調節機能が低下し、注意力の低下や判断の遅れ、単純ミスの増加につながる可能性が示されていますTanaka et al., 2011。HRVが高い人ほど思考力や対応力が良好であるとの報告もあり、逆にHRVが低い状態では、思考のキレや対応力が鈍り、仕事の精度が落ちやすくなると考えられます。

また、自律神経の乱れは感情コントロールとも関係しており、調節力が低いほど、イライラしやすい、落ち込みやすい、過度に緊張しやすいといった傾向がみられることがわかっていますOkawa et al., 2019

さらに、バーンアウトする人は、そうでない人と比べてHRVが低いことも報告されており、自律神経の状態は一時的なパフォーマンスの低下だけでなく、長期的に働き続けられるかどうかにも関わる重要な要素であると考えられますVente et al., 2003