自律神経の“摩耗サイン”
第一線を走り続けるビジネスパーソンは、責任も裁量も大きく、「多少の不調は仕事のうち」「疲れている自分が普通」と感じがちです。その中には、「休んでも疲れが抜けない」と悩む人も少なくありません。
その背景にあるキーワードのひとつが「自律神経」です。
自律神経は、心拍・血圧・呼吸・体温・胃腸の動き・ホルモン分泌などを24時間調整する、いわば“体のオートパイロット”。このバランスが乱れると、だるさ、集中力低下、イライラ、動悸、寝つきの悪さ、朝起きられない、といった不調として表れます。
自律神経の疲弊は、仕事のパフォーマンスにも直結します。判断力の低下、ミスの増加、言葉がきつくなる、アイデアが出ない――それは「年齢のせい」ではなく、自律神経の“摩耗サイン”かもしれません。短期的に乗り切れても、中長期的にはメンタル不調や生活習慣病、心血管疾患へとつながるリスクもあります。
今回は、パフォーマンスを維持して働き続けるために、「自律神経にいい生活・ダメな生活」を具体的な行動レベルで解説します。
自律神経は「アクセル」と「ブレーキ」
自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」の2つで構成されています(McCorry, 2007)。交感神経はアクセル役で、日中の活動や緊張時に心拍数や血圧を上げ、集中力を高めます。一方、副交感神経はブレーキ役として夜間や休息時に働き、心拍を落とし、消化や回復を促します。
本来は、日中は交感神経、夜は副交感神経へと自然に切り替わる日内リズムが保たれています。このスイッチが滑らかに働くことで、パフォーマンスと体調は安定します。
ところが、慢性的なストレス、長時間労働、睡眠不足、不規則な生活、過度な飲酒、夜間のスマホ使用などが続くと、夜になっても交感神経が十分に鎮まらず、回復を担う副交感神経が働きにくくなる可能性があることが報告されています(Zhang et al., 2025;Zambotti et al., 2020;Nose et al., 2017;Jarczok et al., 2013)。このような状態では、心拍変動(HRV)と呼ばれる自律神経の調節機能を反映する指標が低下することが示されています。

