「運のいいヤツと思われなさい」という助言
いつからか高市氏は、「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助のもとで、金融や為替の勉強をしてみたいと真剣に考えることになっていく。
さらに松下政経塾に合格できたのも、大休さんからのアドバイスによるものが大きかった。
三次試験の面接の前日、高市氏は、父の大休さんから松下幸之助の本を1冊、手渡された。
「行きの新幹線のなかで読むように」
さらに、大休さんは言った。
「ひと言だけ、言っておくけど……。参考までの話だから。松下さんはどう思うか知らないけれど、運のいいヤツだと思われるように振る舞いなさい。堂々と、ニコニコしていればいいよ」
父によると、よく会社の面接試験などで、不景気の時には面接官の同情をなんとか買おうと、泣きを入れてくる人がいるのだという。
「父を亡くして、残された母は病気で、自分がこの会社に入らなければやっていけません」
だが大休さんは、そういう同情作戦には否定的だった。
「でも、そんな運の悪い人間を会社に入れたら、社運まで傾いていくと思うから、俺が面接官だったら落とすよ。それだったら、ニコニコして、運のいいヤツだと思われなさい」
それが父がくれたアドバイスだった。
思いっ切りの笑顔で松下幸之助に選ばれた
高市氏の面接試験は明らかに失敗だったという。しかし、父の言葉を思い出しながら、面接会場の外に出ると、廊下で松下政経塾の職員がポラロイドカメラを持って待ち構えていた。
子供の頃から、「カメラを向けられたら笑いなさい」と言われて育ったので、ひどく落ち込んでいるにもかかわらず、高市氏は精一杯の笑顔をつくって撮影に臨んだ。
あとで話を聞いてみると、三次試験は松下幸之助本人がその夜、ホテルの部屋で受験者のポラロイド写真を並べて合格者を選んだという。その判定基準は、運のよさそうな顔か、愛嬌のある顔だった。
面接では、極度の緊張によって愛嬌を示す余裕などなかった。だが、ポラロイド写真の撮影時には、思いっ切りの笑顔で映ることができた。
なんと、それが合格の決め手になったのだ。父の大休さんの「ニコニコしていなさい」という教えがあってこそだった。


