子に拒絶される母親

2023年3月。デイサービスのスタッフがお迎えで玄関の呼び鈴を鳴らした所、自分の体力を過信しがちな母親は、手すりも杖も使わず小走りで玄関ドアに駆け寄ろうとした。

すると滑って転んだ。

痛みで母親はうずくまり、玄関ドアを開けることができない。それでも何とか這って行って新聞受けの小窓から鍵を渡し、家に入ってもらったところでスタッフが119番通報。搬送先の病院で「大腿骨頸部骨折」と診断された。

「滑り止めの付いた靴下を買って渡していたのにそれは履かず、いつまでも古くてダルダルになった靴下を履いていたため、滑って転んでしまったようです」

呼び鈴を押す手元
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

人工股関節に置き換える手術を受け、3週間ほど入院した後、リハビリのために転院。だが、3カ月経っても自活できるほどの回復が望めなかったため、老人健康福祉施設に転院する。

「老健は最大半年という期限があり、その後は母宅か兄宅か私宅か老人ホームかの4択を迫られました。母宅だと、私か兄の付き添いが条件となり、断念。兄宅は、兄も義姉も拒絶。私宅は、私が同居は絶対に無理ですし、ケアマネさんに『2階にキッチンと風呂があるので、歩行器がないと歩けない人の介護に向かない』と言われ、老人ホームの一択になりました」

86歳になった母親は歩行器がないと歩けず、階段の昇降は1人ではできなくなっていた。

2023年12月27日。ケアマネジャーの紹介により、母親はケアハウス(軽費老人ホームC型)に入居が決まる。

月13万円の費用は、母親の年金と、400万円ほどあった母親の貯金から出している。

「母は、自分の遺産は兄(寿司職人など職を転々として今は元々母親が勤めていた会社に勤務。妻子がいる)にやると言っていますが、残らないと思うので、今ある母の少ない預金をやりくりする事にやりがいを感じています。自分ばかりにお金を使ってきた母の、ひた隠しにしてきた財産すべてが判明し、私が管理できるようになったのはよかったと思います」

出産後に母親の呪縛に気づいた皐月さんは、母親と距離を置くことで、最悪の事態を避けられた。

もしも、母親に贈り物をし続けていた頃の皐月さんのまま介護を迎えていたら、もっとつらい思いをしていただろう。

自分の人生は、自分を優先していい。つらい思いをしてまで親の介護をする必要はない。

皐月さんのように距離を置き、手術や入院などの必要な時だけ親に協力するのも、「介護している」と胸を張っていいのだ。

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