「治る可能性がある認知症」

2019年9月。82歳になった母親が、52歳の皐月さんの留守中に自宅に電話をしてきたため、留守番していた15歳の息子が出ると、「渡すものがあるからお母さんに実家に来るように言って」と伝言した。

翌日、皐月さんが実家に行くと、

「何しに来た? そんな電話なんかしてない。息子くんがウソを言ってるんだ。あんたに用なんかない。あの子がウソつきなんだよ」

と孫を平気でウソつき呼ばわりする。

皐月さんが

「なんでそんなウソを言う必要がある?」

と問いかけても

「知らん! 帰って!」

と取り付く島もない。

しかたがないので、渋々皐月さんが帰り支度をし、玄関で一言、

「なんか渡すものがあったんじゃないの?」

と声をかけると、突然母親は、

「あ! ある!」

と大声を出し、部屋の中から箱を取り出すと、「いただきものの菓子折」と言って渡された。51歳の時に糖尿病と診断され、甘いものを制限されている母親は、お菓子を食べることを避けているのだ。

インドのスイーツの詰め合わせ
写真=iStock.com/mukesh-kumar
※写真はイメージです

「よく、食べた内容を覚えてないのは大丈夫だけど、食べた事を覚えてないのはヤバいと聞きます。母は、私を呼んだ理由だけでなく、電話をしたことさえ覚えていませんでしたから、まさに『そのヤバいやつが来た!』と思いました」

皐月さんは、すぐに近所にある物忘れ外来を探し、予約。MRI検査と認知症テストを受けると、その病院では異常なしだったが、セカンドオピニオンを提案され、大きな病院を受診する。その結果「水頭症」であることが判明した。

水頭症(特に特発性正常圧水頭症)での物忘れは、以下のように3大症状の一つとされる。

・歩行障害(すり足・小刻み歩行)
・物忘れ(意欲低下・集中力低下)
・尿失禁(頻尿・尿漏れ)

「治る可能性がある認知症」として知られ、脳室に髄液が溜まることで脳を圧迫し、徐々に進行するため、早期発見・治療が重要。脳脊髄液を体外に流すためにカテーテル(管)を留置するシャント手術で改善することもある。

2019年12月、母親は入院し、シャント手術を受けた。