「出し尽くしました」と答えて評価された日
私はラジオ局のリポーター時代、スタジオのキャスターの質問に対して答えられないことですら、正直に言ったことがある。
当時、あらゆる現場を走り回っていた。事件、スポーツ、芸能まで、日々どこに行くかわからない。当然専門性は薄くなり、すべてを深く取材することはできていなかった。
ある日、国会の話題をリポートしたときがあった。放送時間までに国会内を走り回り、想定問答を準備して本番に臨んだ。なんとか無難にこなしたつもりだったが、スタジオから追加の質問が飛んできた。
「佐藤さん、ほかにわかったことはありますか?」
頭も真っ白だ。追い詰められた私は、とっさにこう答えてしまった。
「いえ、私の方からは……もう大丈夫です。すみません、出し尽くしました!」
やばい、リポーター失格だ。そう思った瞬間、スタジオは爆笑に包まれた。
「佐藤さんは出し尽くしたんですね(笑)」
私の焦る気持ちとは裏腹に、スタジオは一気に和み、盛り上がった。
会社に戻ると、上司から「面白かった。人間味があってよかった」と褒められたのだ。
もちろん、取材不足は反省すべきだ。だが、「わからないときに、素直に『わからない』と言って謝る」。これはAIにはできない人間の魅力であると思う。人が弱みを見せることは、ときに愛嬌という武器になる。
AIに勝てるのは「あなたの人間くささ」
企業が書類選考を廃止し、「直接の対話」をより求め始めた今、面接官が本当に見たいものは何か。それは、完璧に練り上げられた志望動機でも、AIが書いたような優等生的な回答でもない。
質問に対して正直に答える「人間くささ」だ。
アドリブ力とは、面白いことを言う力ではない。自分の熱意や感じたことを飾らずに言葉にする勇気さえあればいい。奇をてらう必要はない。嘘をつく必要もない。
普通のことを正直に話せる人は、本当に強い。


