超大国・アメリカと対等になるための海洋進出

地理的にも、台湾の重要性は極めて大きいものがあります。地政学上、ランドパワーと呼ばれる国家が世界の覇権国になるのが難しいのは古代から変わっていません。

陸地は山や川、砂漠、海といった自然の障害で隔てられています。一方、航海技術や良い港に恵まれた島国などの「シーパワー」と呼ばれる国々にとって、海上での移動は陸上よりはるかに簡単で、世界中のどこにも戦力を展開できます。

歴史的に見ても、覇権国やそれに匹敵する地位を持とうとする国は、強力な海軍を持っていました。超大国・アメリカと対等の立場になって、欧米の内政干渉を阻むことを目指す中国が近年、海軍を強化して海洋進出を続けているのはこの一環です。

中国にとって、太平洋に海軍を進出させるにあたり、最も邪魔になるのが日本と台湾の存在です。ただ、米軍が駐留する日本を占領して道を開くのは軍事力の観点から現実的ではありません。このため、台湾の制圧を最優先するのは自然といえます。

卓上の星条旗と五星紅旗
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中国が台湾を得たら日本に起きること

中国が台湾を得れば、中国が南シナ海や東シナ海を包み込む形で引いた防衛ライン「第1列島線」内の支配力が格段に高まります。そうなれば、ここにアメリカ軍の艦船が入るのも難しくなります。

南シナ海は、水深が深いので、核兵器を搭載する原子力潜水艦が活動しやすい環境です。この一帯での支配力が高まれば、中国とアメリカの核戦力が均衡に向けて大きく近づくことになります。

韓国や日本では、駐留アメリカ軍の活動が難しくなります。内向きの志向を強めるアメリカが、太平洋の勢力圏を二分する取引を中国と交わす可能性も否定できなくなります。その場合、グアムなどを結ぶさらに東の第2列島線に防衛ラインを後退させるかもしれません。

これは日本や韓国が中国の勢力圏に入れられる懸念が大きくなるか、独力で中国と対抗しなければならなくなることを意味します。前者なら、国の重要な政策で中国の了承が必要になるといった属国のような状態に近づきます。後者なら人口で10倍以上の核大国に対抗するために、軍事費や軍の陣容を急拡大させなければならなくなります。