調査官が最も嫌う「家計費の混入」

副業の確定申告に限りませんが、税務調査において調査官がとくに気にするのが、個人的な支出を事業の経費に紛れ込ませるケースです。

典型的なパターンをいくつか紹介しましょう。

まず、土日の外食費を「打ち合わせ費」として経費に計上するケース。調査官は領収書の日付を確認し、「この日は土曜日ですが、どなたと打ち合わせをされましたか?」と聞いてくるでしょう。

次に、家族旅行を「研修費」などとして処理するケース。調査官は「研修の目的と成果を教えてください」と、場所と目的の整合性を突いてきます。旅行先が観光地で、同行者が家族であれば、それは確実に経費を否認されます。

さらに、日常的なスーパーやドラッグストアの領収書が経費に入っているケースも、調査官の目を引きます。「消耗品費」に計上されていても、購入品目が洗剤や食料品であれば、事業との関連性を説明するのは困難です。

経費として認められるためには、その支出が事業の遂行上「直接必要」であることを説明できなければなりません。たとえ領収書を残していても、その中身によって経費になるかどうかを判定されます。

封筒に印刷されたe-Taxのロゴ
プレジデントオンライン編集部撮影

税務署から電話「絶対にやってはいけないNG対応」

最後に、実際に税務調査の連絡が来た場合の対応についてお伝えします。税務署から電話がかかってきたとき、対応を誤ると事態を悪化させてしまうことがあります。

NGケース① 電話を無視する、居留守を使う

税務署からの電話に出ない、あるいは折り返さないという対応は、最悪の選択です。

そもそも税務署からの最初の連絡は、正式な「税務調査」ではなく、「行政指導」として行われるケースも少なくありません。行政指導とは、申告内容に疑問点があるため自主的な見直しや修正申告を促すもので、あくまで任意の協力要請です。この段階で素直に応じて修正申告をすれば、加算税が軽減される、あるいはかからないこともあり、比較的軽い対応で済みます。

ところが、この電話を無視し続けると、税務署側は「行政指導では対応が得られない」と判断し、正式な税務調査へと移行します。調査官は「何か隠しているのではないか」と疑いを強め、より厳しい姿勢で調査に臨むことになります。

つまり、電話一本を無視しただけで、修正申告で穏便に済んだはずの話が、本格的な税務調査へとエスカレートしてしまうのです。税務署からの着信に気づいたら、できるだけ早く折り返すようにしましょう。

NGケース② パニックになって調査日程を決める

税務署が税務調査の連絡をするとき、「○月○日に伺いたいのですが」と具体的な日程を提示してきます。相手がお役所だけに、「断ったら印象が悪くなるのでは」と思い、つい「わかりました」と答えてしまいたくなるかもしれません。

しかし、調査日程は交渉できるものです。準備不足のまま調査を迎えると、本来なら説明できたはずの経費の根拠を示せなかったり、領収書の整理が間に合わなかったりと、不利な結果につながります。調査で問われるのは「当日どれだけきちんと説明できるか」ですから、準備期間の確保は結果を大きく左右します。

電話では「スケジュールを確認して折り返します」と伝えて一旦切りましょう。その間に帳簿や領収書を整理し、必要に応じて税理士に相談する時間を確保してください。

NGケース③ 調査前に帳簿や領収書を「整理」

調査が決まると、「あの経費、ちょっとまずいかも……」と不安になり、都合の悪い領収書を抜いたり、帳簿の数字を書き換えたりしたくなるかもしれません。しかし、これは最もやってはいけない行為です。

帳簿や書類に手を加える行為は、税法上「隠蔽・仮装」とみなされ、重加算税の対象になります。税率は過少申告の場合で35%、無申告の場合で40%にのぼり、通常の加算税とは比較にならない重さです。さらに、悪質と判断されれば刑事告発に発展するケースもあります。

一方で、帳簿に多少の計上ミスや曖昧な経費があったとしても、それ自体は珍しいことではありません。調査の場で「この部分は認識が曖昧でした」と正直に説明すれば、修正申告と過少申告加算税(5〜15%)で済むのが通常の流れです。

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つまり、下手に証拠を消すほうが、はるかに大きな代償を払うことになります。不安な経費があるなら、抜くのではなく、調査までの間に、説明できるようにロジックを整理しておくのが正しい対処法です。

税務署からの連絡は確かに驚くものですが、誠実に対応すれば過度に恐れる必要はありません。きちんと帳簿をつけ、経費の根拠を説明できる状態であれば、調査は比較的スムーズに進みます。

確定申告は、自分の所得と税額を「自ら申告する」制度です。副業の申告で大切なのは、「いかに税金を安くするか」ではなく、「いかに正しく申告するか」です。正しい申告をしていれば、たとえ税務調査が入っても怖いことは何もありません。

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