住宅ローンの繰り上げ返済はするべきか。元国税専門官の小林義崇さんは「低金利が続く現在の日本では、住宅ローンを繰り上げ返済する人ほど、長期的には資産形成で不利になるケースが少なくない。結果として1000万円単位の機会損失をすることになる」という――。(第3回)

※本稿は、小林義崇『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

電卓を手に住宅ローンの計算をする人
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

低金利時代こそ繰り上げ返済はNG

「借金は一日でも早く返すべき」という考えは、多くの日本人が親世代から受け継いできた一種の道徳観かもしれません。

たしかにバブル経済時代の日本では住宅ローンの金利は高く、「投資をするよりも、繰り上げ返済をした方が得」という考えに合理性がありました。金利負担が重ければ、一日も早く元本を減らすことが家計を守る最善の策です。

しかし、現代の低金利の日本においては、その常識があなたの資産を増やすチャンスを奪うことになりかねません。変動金利なら1%にも満たない金利で住宅ローンを借りられる今、返済を急ぐことで得られるメリットは、かつてなく小さくなっています。

そのため、手元に余裕資金ができたときは、それを繰り上げ返済に充てる前に、一度立ち止まって考える必要があります。リボ払いや消費者金融などの高金利の借金は一刻も早く返済すべきですが、住宅ローンは違うのです。

実は、低金利下における住宅ローンの繰り上げ返済には、見過ごせないデメリットが存在します。それは、「投資で収益を得る機会」「住宅ローン減税」「団体信用生命保険(団信)」という3つの大きなメリットを、自ら手放すことになる、という点です。

繰り上げ返済は資産を築く機会を逃す

中でも最も大きなデメリットは、「機会損失」です。仮に変動金利で住宅ローンを借りたなら、繰り上げ返済で節約できる金利はせいぜい年1%程度。その資金を、NISAなどを活用して年5%程度のリターンが期待できるインデックス投資に回せば、長期的にはるかに大きな資産を築ける可能性があります。

ここで具体的な数字を見てみましょう。3000万円を金利1%で35年間借りたとします。繰り上げ返済をしなければ、35年間でトータル約3557万円の返済が必要です。この条件の下、5年目に300万円を繰り上げ返済した場合と、この300万円を繰り上げ返済せずに30年間、年利5%で運用した場合とを比較すると、35年後に次のような結果となります。

【①5年目に1度だけ繰り上げ返済を実施して返済期間を短縮した場合】
繰り上げ返済額:300万円
総返済額:約3509万円
減った総返済額:約47万円

【②住宅ローンの繰り上げ返済を行わず積立投資を行う場合】
元本(総投資額):300万円
運用後の総額:約1297万円
運用益:約997万円