税務署は見逃さない「KSKシステム」の威力
「副業の経費を多少水増ししても、バレないだろう」と思っている方がいたら、その考えは改めたほうがいいでしょう。
税務署には「KSK(国税総合管理)システム」と呼ばれる基幹システムがあります。全国の国税局と税務署をネットワークで結び、納税者の申告内容、過去の申告履歴、取引先からの支払調書、不動産や金融資産の情報などを一元管理しています。このシステムは2001年から本格運用されており、すでに20年以上にわたるデータが蓄積されています。
KSKシステムには膨大なデータが蓄積されているので、異常値の検出が可能です。たとえば同じ業種・同じ規模の事業者と比較して、特定の経費科目が突出して大きい場合、システムがそれを検知する可能性があります。たとえば、年間売上200万円のウェブデザイナーが「旅費交通費」に180万円を計上していれば、同業者の平均との乖離が目立つのです。
調査官はこうした異常値を手がかりに、どの納税者を調査対象にするかを選定していきます。税務署は最大で過去5年分(悪質な場合は7年分)をさかのぼって調査できますから、3年前の経費の水増しが今年になって指摘される、ということも珍しくありません。
経費の水増しだけでなく、収入の申告漏れも、いずれ税務署にバレます。副業ビジネスパーソンの場合は、勤務先が税務署に提出する「給与支払報告書」や、取引先が提出する「支払調書」によって、収入の全体像が税務署に把握されています。副業の取引先から年間50万円の報酬を受け取っているのに、確定申告書に記載がなければ、それだけで「申告漏れ」として調査の対象になり得ます。
家族に給料を払うなら2文字が重要
副業が軌道に乗ってきた場合も注意が必要です。売上もアップして「妻(夫)に手伝ってもらっているから給料を払いたい」と考える方が出てきます。青色申告の「専従者給与」は、家族への給与を全額経費にできる強力な節税策ですが、ここにも税務署が厳しく目を光らせるポイントがあります。
まず、大前提として専従者給与を経費にするためには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければなりません。届出なしに家族への支払いを経費にしている申告書は、調査官から見れば一目で「問題あり」と判断されます。
次に、専従者の「従事期間」です。青色事業専従者として認められるには、原則としてその年を通じて6カ月を超える期間、その事業に専ら従事していることが必要です。ここで「専ら」の2文字が重要ポイントで、たとえば妻が別の仕事をしながら夫の副業を手伝っている場合、「専従」の要件を満たさないと判断されるおそれがあります。
さらに、給与の金額が「労務の対価として相当」かどうかも重要なポイントです。たとえば、月に数時間の事務作業しかしていないのに、月額30万円の給与を支払っていれば、やはり過大として経費が認められなくなります。
家族への給与が否認されると、経費から外れるだけでなく、過少申告加算税や延滞税といったペナルティの対象にもなります。専従者給与は正しく使えば大きな節税効果がありますが、実態が伴わなければ追徴課税を招く両刃の剣なのです。

