年商数十億の起業家の話

以前、年商数十億円に上るという若手起業家のセミナーに参加する機会がありました。そのセミナーで税金が話題に出てきたので、私はてっきり「脱税スレスレの話が出てくるのでは」と思っていたのですが、その予想は完全に裏切られました。彼の話は、至極真っ当なものだったのです。

「経費として計上できるかどうか迷う時点でグレーということ。後ろめたい気持ちがあるのなら、最初から経費計上しないのが一番」

「大きな売上が発生したら、入金前でも納税義務が生まれる。だから普段から無駄使いはせず納税に備えて資金を確保しておく」

結局、セミナーの最後に至るまで脱税じみた話は一切ありませんでした。その経営者の話から私が感じたのが、徹底した「守り」の意識です。成功する起業家というと、売上拡大などの「攻め」が目立ちますが、それ以上に「守り」をしっかり固めています。

年商が大きくなれば税務調査のターゲットになりやすく、脱税が発覚した際のダメージは会社の存続を揺るがすほど大きくなります。とくに「査察調査」と呼ばれる強制調査が行われれば、検察に告発されて逮捕・起訴に至る可能性さえあります。

ちなみに国税庁の発表によると、2023年度には査察調査を受けて裁判に至った一審判決83件のすべてが有罪判決となりました。

また、脱税をすると取引先や取引銀行にまで調査が及び、信用を根こそぎ失います。さらには、脱税をしたことがマスコミに大きく報道されてしまえば、事業の継続自体が困難になります。さらには、国税局や税務署は脱税を行った者の記録を残していますから、一度そのような記録がつけばその後も税務調査の対象として狙われやすくなります。

一度嘘をつくと、負のスパイラルに陥る

脱税には、もう一つ怖い特徴があります。それは、一度嘘をつくと、その嘘を正当化するためにさらなる嘘が必要になり、負のスパイラルに陥ってしまうということです。「今回だけ」のつもりが、なかなか抜け出せない状況に追い込まれてしまうのです。

小林義崇『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社+α新書)
小林義崇『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社+α新書)

ある資産家から聞いた話ですが、彼の知人の経営者は、最初は「今期だけ」という軽い気持ちで売上を一部隠したものの、翌期以降もその金額が増え続け、最終的には引き返せない状況に追い込まれたといいます。そうして脱税の金額が大きくなったタイミングで税務調査が入り、巨額の追徴税を受けたそうです。

このように、大きな脱税行為も最初はほんの些細な出来心がきっかけということがあります。ちょっと税金を下げたくて契約書の偽造を一度したら、その嘘がバレないようにするために、銀行のお金を動かしたり、関係者と口裏を合わせたりして、どんどん取り返しがつかなくなっていきます。

賢くお金を残したいなら、あなたが選ぶべき方法は脱税では絶対にありません。正しい知識を身につけて堂々と「節税」をしてお金を残していきましょう。

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