使い手の立場に立ち「パーツ販売」を開始
長谷園では、おいしいご飯が炊き上がるという言葉通りの良品を、丹精込めて手作業で作っている。
土鍋の一部が割れても、割れた部分だけを交換する。土鍋の底が黒ずんできても、元通りに仕上げ直す。「使い方が分かりにくい」「うまく炊けない」という声があれば取扱説明書を変える。
土鍋を長く大切に使えるように、使い手の視線に立って商品づくりやサービスを提供している。この心が「作り手は真の使い手であれ」ということだという。
たとえば、割れた部品だけを販売するパーツ販売は、長谷園ならではのサービスの一つだ。
当初、社内からは「割れたパーツと合う組み合わせを何百個のなかから探すのは手間だ」「儲けにならない」と反対意見が噴出した。しかし、康弘さんはそう考えなかった。
「自分が土鍋を使う立場なら、割れて本体を買い直すより、割れたパーツだけを買いたいと思うはずです。作り手としては、使い手に土鍋を使い続けていただくことが大切なので、お客さまが割れた部分だけ欲しいとおっしゃったら、その要望に耳を傾ける。それが私ども代々の教えなのです」
わが家でも外蓋、内蓋を2回割った。長谷園に電話をしたら、パーツ購入できると教えてもらった。今使っているかまどさんは2代目だが、所々欠けていても、おいしいご飯が炊き上がる。
「伊賀焼を伝統産業にしないといけない」
同社が大切にしてきた使い手主体の精神によって事業再生を果たした。伊賀本店に加えて東京・恵比寿にもアンテナショップ「東京店igamono」を開き、土鍋を使った料理教室やワークショップを開催している。
創業194年を迎える長谷園。約2年前に後継者として手を挙げた長女・早紋さんが、事業に新風を吹き込んでいる。
次に目指す先は、と聞くと、康弘さんは作り手として目指すべきことを実直に語った。
「伊賀焼を、伝統産業としてさらに発展させたいと思っているのです。つまり、昔と同じ物をずっと作り続けるのでなく、今のライフスタイルに合う物を作って、喜んでもらえるものづくりをしていかないといけない。日本の食文化を継承し、お客さまの食卓に楽しさを届ける。こんなやりがいのある仕事はありません」




