突然売れ出し「1年待ち」の人気商品に

従業員40人弱の小さな窯元の事務所に、無数の電話が鳴り響いた。「かまどさんを注文したい」という全国からの問い合わせだった。

「いったい何が起きているのか、最初はわかりませんでした。かまどさんの発注がいきなり増えていったのです」

一度断られた販売店からも「取引させてほしい」と言われるようになった
撮影=プレジデントオンライン編集部
一度断られた販売店からも「取引させてほしい」と言われるようになった

従業員が調べたところ、NHKの人気料理番組「きょうの料理」に出演した著名料理家に「この土鍋でごはんを炊くと簡単でおいしい」と紹介されたというのだ。

番組の反響は大きかった。これを皮切りに、かまどさんはテレビや雑誌に引っ張りだこになり、瞬く間に商品予約1年待ちという人気商品になっていった。

かまどさんの波及効果で、蒸し鍋や燻製専用土鍋など他の土鍋も売れていった。

売上はメディアの露出に比例して増えていき、2018年には過去最高売上の9億円を達成。従業員を増やし、生産管理や顧客管理など社内の組織づくりも行った。

蒸し料理ブームで人気の「ヘルシー蒸し鍋」
撮影=プレジデントオンライン編集部
蒸し料理ブームで人気の「ヘルシー蒸し鍋」

「作り手は真の使い手であれ」という工房訓

現在、商品の種類は200種。かまどさんは一合炊きで1万1000円、一番人気の三合炊きで1万6500円。どれも売れ行き好調で、2025年には過去最高売上を塗り替えた。

長谷園が製造する商品のうち土鍋は9割を占める
撮影=プレジデントオンライン編集部
長谷園が製造する商品のうち土鍋は9割を占める

コメの価格が高騰しているからこそ「せっかくだったらおいしく食べたい」という消費者の需要を取り込んだ、と康弘さんは見る。

「かまどさんがここまで売れてベストセラーになるとは、まったく予想していなかった」と言うが、単なる運や偶然で成功をつかんだわけではない。一度購入したお客さんがリピーターとして戻ってくるというのは、使い手を感動させる商品力に成功の要因があるのではないだろうか。それに対して、康弘さんはこう答える。

「『作り手は真の使い手であれ』という代々の工房訓を守り、ものづくりに妥協しないでやってきたことが結実したのだと思います。あの時、資金のことを優先して妥協していたら、今のかまどさんはなかった」