ジョブズが晩年、心を奪われた画家

僕は釋永さんのこの話を聞いて、ある画家の名前を思い浮かべずにはいられなかった。20世紀のアメリカを代表する抽象画家マーク・ロスコ(1903-1970)だ。

佐伯健太郎『スティーブ・ジョブズ1.0の真実』(晶文社)
佐伯健太郎『スティーブ・ジョブズ1.0の真実』(晶文社)

2011年10月のジョブズの追悼式で、実の妹で作家のモナ・シンプソンが、「最後の1年、彼はマーク・ロスコというそれまで知らなかった画家の画集を研究して、アップル・キャンパスの壁に何を描けば人々をインスパイアできるかを考えていました」とスピーチしている。

ロスコの作品は、縦長の画面に長方形のゆるやかな色面を2つ、3つと並べた独特なスタイルが有名だ。千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館にはアジア唯一の「ロスコ・ルーム」があり、7点が展示されていた(美術館は2025年3月末で休館し、報道によると、「ロスコ・ルーム」の7点は、東京・六本木の国際文化会館で2030年に開館する新館で展示される見通しだ)。

僕には、釋永さんがジョブズのオーダーを受けて作った皿の色彩感覚とロスコの作品が、とても似ているように見える。ジョブズには釋永さんと出会った頃から、ロスコのような色彩感覚がすでにあったのではないだろうか。僕がそんなことを話していると、釋永さんが本を持ってきた。それはロスコの画集だった。釋永さんも同じ考えだったのだ。

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