ケトン体で体内時計が整えば、睡眠の質も上がる
ケトン体はエネルギー効率がいいだけではなく、さまざまな優れた側面を有しています。
最も注目すべきが、BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor=脳由来神経栄養因子)という物質の分泌を増やすのではないかと考えられていることです。
BDNFは記憶を司る海馬に多く含まれ、神経細胞の働きを活発にしてくれることが明らかになっています。
このBDNFの分泌が増えれば、脳の神経細胞の維持や新生が促進され、脳の萎縮防止につながります。
さらに、「抗酸化作用」があることもわかっています。それによって脳の酸化ストレスが軽減され、神経細胞の損傷を防いでくれます。
また、「抗炎症作用」も指摘されています。持続的な慢性炎症はあらゆる疾患の原因となることが明らかになっており、脳に炎症があれば、認知症を引き起こすきっかけとなります。ケトン体は、そのリスクを低減してくれます。
加えて、私たちの体内に組み込まれた「時計遺伝子」を制御して、体内時計を整えることもわかってきました。
現代人の多くが、睡眠の問題を抱えていると言われます。24時間、深夜にも行動する生活スタイルや、スマホなどのブルーライトを見続ける習慣が、睡眠の質を落としているのです。
しかし、質のいい睡眠は脳の休息に不可欠。ケトン体によって体内時計が整えば、睡眠の質も上がり、脳の健康が保たれることは十分に想像できます。
ケトン体が誤解されたワケ
このように素晴らしい働きを示すケトン体ですが、かつては悪者扱いされていました。1991年にアメリカの研究者によって「妊娠中に母体のケトン体が高い状態で生まれた子どもは2~5歳時の知能が下がる」という論文が出され、「血中ケトン体は低いほうがいい」というのが長く定説になってしまったのです。
この論文には、数々の誤りがあるのですが、今でもそれを信じ込んでいる医療関係者がいるのが残念なところです。
また、「ケトアシドーシス」という症状を、無理解なままに恐れている傾向があるのも困ったものです。ケトアシドーシスとは、「血中のケトン体が著しく増え、血液が酸性に傾いている危険な状態」などと解説されますが、それはよほど重篤な糖尿病の患者さんにごくまれに起こるものであり、一般的には生じません。
そもそも、「著しく増え」の著しくとは、いったいどのくらいを指しているのかも定かではありません。みんな事実を確認せずに、騒いでいるだけなのです。
その人が、どのくらいケトン体を使っているかは、血中ケトン体濃度を測ることでだいたいわかります。血中ケトン体濃度の基準値は26~122とされており、空腹時には高く食後には低くなるというように、1日のうちでも変動します。

