都市部に振り落とされた
【金成】しかし、地元で育った人たちと移民との「仕事の棲み分け」のない業界もある。建設労働に就いている労働者は、移民は賃金が低くても働くので「単価が落ちた」「単価が伸びなくなった」と言いますし、手取りが減り、財布(経済)に影響を及ぼしているわけです。
1965年に「改正移民法(ハート・セラー法)」が制定されて以降、出身国の割り当て制限が撤廃され、アジア系など非白人系の移民が急増し、アメリカ人の構成が明らかに変わりました。
私が駐在していた2019年ぐらいにはすでに、「高校の教室をのぞけば、半分は非白人」という時代になっていて、今後は国全体がその方向にいくわけです。「多様性は力だ」というのは本当にその通りだと思いますが、それをどう進めていくのか、やり方はいろいろあります。
都市部にいる「人生がうまくいっている人たち」が運転席でハンドルをずっと握っていると、社会変革のスピードが速すぎると感じる人が助手席や後部座席で確実に出るんでしょうね。
【小泉】金成さんのお話に繰り返し出てくる「都市部で何不自由ない人たち」というのは、一つの病理でもあります。同じ国の中にこれだけ苦しい人がいるのに、年収5000万円、価値観はリベラル、「有機食材しか食べません」という人たちもいるわけじゃないですか。「私の人生、順風満帆ですよ」みたいな。
日本の3~4倍で進む格差
【金成】特に都市部に多いのではないかと思います。私の取材先は、まだ大学院生ですが、大都市での就職が内定していて、初年度の年俸は「23万ドル(3000万円超)」と示されたそうです。それも数年後には「倍増する」との見通しまで付記してあったそうです。
【小泉】なんだかんだ言っても日本の場合、地方と都市、インテリとそうでない人、ホワイトカラーとブルーカラーの格差がそこまでは大きくない。これは本当に戦略的な資産だと思っています。でもアメリカの格差はもっとエグいですよね。
【金成】日本の格差の度合いを考えるとおっしゃる通りですね。大学に行くか、その土地に根ざして生きていくのか、以前は「お前の人生、どっちの道を歩むんだ?」という選択の違いにすぎなかった。
地元に残って働いていれば、ミドルクラスになって、地域社会の信用も集め、ステータスもつくれた時代が日本にはしばらくあったのではないでしょうか。日本もしんどくなってきたと思いますが、アメリカは3倍速、4倍速ぐらいで「しんどさ」が進行しているように思います。




