仕事で評価される人はどんな工夫をしているのか。編集者・ライターの鈴木俊之さんは「会食後に『おいしかったです』や『とても勉強になりました』と定型文を使う人は、相手の記憶に残らない。言葉は情報ではなく、感情と行動を動かす“トリガー”だ」という――。(第2回)

※本稿は、鈴木俊之『タイトルから考えよう』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/NicoElNino
※写真はイメージです

会食後の「おいしかったです」は禁句

この章では、これまで語ってきたタイトル・文章哲学を具体的な形にするための実践的な技術を紹介します。名付けて「1秒で実践できる! タイトル力を上げるための『言葉の筋トレ』」です。「筋トレ」と言っても、特別な場所や時間を必要とせず、あなたの日常のあらゆるコミュニケーションをトレーニングの場に変えることができる、誰でもすぐに始められる方法です。

この筋トレの目的は、言葉を単なる情報伝達のツールとしてではなく、相手の感情を動かし、次の行動を促す「トリガー」として捉え直すことです。

【ルール1:禁句を決め、定型から全速力で逃げよ】

まず、この筋トレを始めるにあたって、簡単なルールを自分に課してください。具体的に言えば、「絶対に使うのをやめる言葉」を決めることです。これは、筋トレにおける「正しいフォーム」を体に覚え込ませるようなものです。

例えば、ビジネス会食の後のLINEメッセージ。多くの人は「本日はありがとうございました。大変有意義な時間でした。おいしかったです!」といった定型文を送りがちです。(私のごはん友達には、実際に毎回このように同じ文章を送ってくる人がいます)この文章を、今日から「禁句」にしてください。最初は、この「縛りゲー」がめちゃくちゃしんどいと感じるはずです。

なぜなら、私たちは日々のコミュニケーションにおいて、こうした定型文にどれほど頼って生きていたかを痛感するからです。

相手の記憶に残りやすい言葉の選び方

「縛りゲー」の難しさは、想像以上に手強いものです。普段、意識せずに使っている言葉や表現を封印すると、まず「何て書けばいいんだ?」と手が止まります。その瞬間こそが、筋トレの始まりです。

感謝の言葉の代替:「ありがとうございました」と言えないとなると、感謝をどう伝えればよいかを真剣に考えざるを得ません。例えば、「○○様からのお話、学生時代からの知識がアップデートされ、大変勉強になりました」と具体的に伝えることで、感謝の念がより深く伝わります。

感想の表現:「有意義な時間でした」を禁句にすると、その「有意義さ」を具体的な言葉で表現する必要があります。「○○様の△△というお話、まさに目から鱗でした」といった、実際にどんな話を聞いたのかを思い出す訓練になります。

食事の感想:「おいしかったです!」と言えないとなると、「アサリの香りが立っていてガーリックとの相性も最高でした」といった、五感に訴える具体的な描写をすることになります。こうすれば、相手の記憶にも残りやすく、「ちゃんと味わってくれたんだな」という好印象に繋がります。

この「縛りゲー」は、まるで重いダンベルを持ち上げる筋トレのように、あなたの思考に負荷をかけるでしょう。しかし、この負荷を乗り越えることで、あなたは無意識のうちに、相手の感情を想像し、相手の記憶に刻まれる言葉を選び出す力が身についていくのです。