※本稿は、世界の働き方研究所『労働時間を貯めて、休日に変える⁉ すごい 世界の働き方』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
中国で目立つ「都市と農村の格差」
中国は、沿岸の都市部に資本を集中させて経済発展が進む一方で、内陸の農村部は発展から取り残されてしまいました。
こうして都市と農村に大きな格差が生まれ、都市部住民の平均可処分所得は、農村部住民の約2.4倍に達しています。高収入で安定した職業は都市部に集まり、農村部には限定的な仕事しかありません。また、医療や年金といった社会保障制度も都市部では充実していますが、農村部では不足している状態だといわれています。
こうした都市と農村の格差、そして両者の働き方の違いに関わっているのが、中国独自の戸籍管理制度である「戸口制度」です。
日本の戸籍は主に家族などの身分関係を登録するものですが、中国の戸口は個人の居住地(基本的には出生地)を登録するものであり、教育や医療、年金、住宅購入、さらには就職といった各種行政サービスの受給資格と密接に紐づいています。
戸口は都市の「非農村戸口」と地方の「農村戸口」に明確に分けられており、原則として、戸口の所在地でなければ、市民としての行政サービスを十分に受けることが難しいのです。都市部へ過度に人口が集中するのを防ぐため、農村戸口から非農村戸口への変更には、以前は厳しい制限が設けられてきました。
ここでいう都市とは、主に「直轄地」である北京市や上海市、天津市、重慶市、また、「一級都市」といわれる甲州市や深セン市、「新一級都市」の杭州市、南京市といった主要都市を指します。
戸口制度が引き起こす社会問題「農民工」
戸口制度は、中国の労働市場において「農民工」と呼ばれる社会問題を生み出す背景となっています。
農民工とは、仕事が少なく満足な収入を得られない農村を離れ、戸口の変更をせず、「農村戸口」のまま都市部で働く出稼ぎ労働者のこと。出稼ぎ行為自体は法的に禁じられておらず、中国の総人口の約2割にあたる3億人近くの農民工がいると考えられています。
農民工の多くは、製造業や建設業、運輸業など、人間の労働力に頼った業種に従事する傾向があり、一部では週平均労働時間が48時間を超えるなど、長時間労働の常態化が課題になっています。
また、賃金水準においても、非農村戸口を持つ労働者と比べると、一説には6〜7割程度と低い水準に留まるなど、戸口の有無による格差があります。さらに、きちんとした雇用契約を結ばないケースも多く、非正規雇用として不安定な働き方になりがちです。都市の医療保険や失業保険といった社会保障制度は「非農村戸口」を持つ人を対象としているため、農民工はこれらのセーフティネットからも疎外されやすいことも問題になっています。



