マアジより安くておいしいアジ
大衆魚の代表選手と言えばアジ(マアジ)だろう。安くておいしいのだから言うことなし。本連載でも初夏に、刺身からのたたき、なめろう、山家焼きの「アジの三段活用」を教えてもらって堪能した。塩焼き、フライ、煮つけにも活躍するアジ。まさに庶民の味方だ。
しかし、最近のスーパーでは新鮮なアジが丸ごと売っていることが少なくなった。刺身に切り分けられて劣化していたり、内臓をつけたままパックされて3日も置かれていたり。一方で、専門店で立派なアジを見つけると、「これがアジの値段!」と高値に驚くこともある。アジが遠い存在になりつつある。
「マアジの他にも安いアジがあるって知ってますか? メアジやムロアジです。鮮度落ちがマアジ以上に早いので、朝獲れのものがどっさり売っていたりします。『刺身OK』と表示されているメアジやムロアジを見つけたら即買いです!」
軽やかな口調で教えてくれるのは鎌倉の鮮魚店「サカナヤマルカマ(以下、マルカマ)」で企画・広報を務める狩野真実さん。マルカマは鹿児島県阿久根市の漁港から新鮮な魚介類を空輸で仕入れている他、地元の神奈川県小田原市で水揚げされた魚も扱っている。この日も小田原から運んできたメアジが2尾500円、ムロアジが1尾500円で売られていた。ムロアジはまるでサバのように丸々と太っていて食べでがありそうだ。これで500円なら安いぞ。
南の魚が北上するといい脂をのせる
まずはメアジから。こちらはマアジにそっくりだけど、目がマアジより大きいのでメアジと命名されたようだ。
「沖縄ではガチュンと呼ばれている南方系のアジだね。南の魚が北上するといい脂をのせることが多い。特に冬のメアジはうまいよ」
魚のことなら生態から料理法まで何でも教えてくれるのは、元水産庁職員でマルカマのアドバイザーでもある上田勝彦さん。マアジよりも筋肉質なメアジ。その刺身はパリッとした張りのある食感を楽しめるらしい。
「ワサビ醤油は合わない。生姜醤油か青唐辛子醤油がいいよ」
ムロアジに関しては「くさやで使う魚」という認識しかなかった。刺身で食べたことなどはない。上田さんによれば新鮮なものはもちろん生でいける。
「ムロアジは削り節に使うぐらいだからうまみの宝庫。その点、サバに似ているな。肉は柔らかめだからメアジと食べ比べてみてほしい」


