マダイよりも安いヘダイよりさらに安い鯛とは
「鯛しゃぶというとマダイのしゃぶしゃぶを思い浮かべますよね? マダイよりも安くて、コクがあるタイがあるのをご存知ですか。クロダイです! コラーゲンたっぷりなので特に女性に喜ばれます。翌朝は雑炊をぜひ!」
気温がグッと下がり、食欲はグッと高まってくる季節。家族で外食しているとお金がどんどん出て行ってしまう。鎌倉の住宅地にある鮮魚店「サカナヤマルカマ(以下、マルカマ)」で企画・広報をしている狩野真実さんによれば、高級料理のイメージがある鯛しゃぶもタイの種類を選んで自宅でやれば格安で楽しめる。
愛知県の海辺に住んでいる筆者は、クロダイは臭みがあったり身が痩せたりしていることが多いという印象を持っていた。釣りに親しんでいる友人知人も「クロダイ? 強い引きは面白いけれど味は期待できない」と言いがちだ。
コラーゲンの多さではタイ科随一、秋冬が食べ頃
「クロダイは季節と地域によって味わいが大きく異なる魚。春に産卵をするとエネルギーを使い果たすので身が白濁して痩せて、美味しくなくなる。でも、秋から冬にかけては回復して、脂がのって筋肉が太くなり、旨みも増していく。11月と12月は全国的に良くなるね」
固定概念を覆してくれるのは、マルカマでアドバイザーを務める上田勝彦さん。元水産庁職員で、全国各地で漁業と魚食を実践的に教えている「魚の伝道師」だ。コラーゲンたっぷりという狩野さんの感想も正しいらしい。
「コラーゲンは表皮および結合組織、つまり筋に多く含まれている。タイ科の中でコラーゲンが一番多いのがクロダイ。漁師でさえ、炊き込みご飯にするならマダイよりクロダイがうまいと言うよ。煮るとうまみとコラーゲンがだし汁の中に溶け出すので、米がもちもちしておいしくなるわけだ」
この日のマルカマで売っていたクロダイは1.5キロもある立派なサイズ。値段は4900円。100グラム330円弱。ちなみに、先月に紹介したヘダイよりもさらに安い。


