テレビの音楽番組は「体験型」に移行している

滝野俊一 エディター 放送批評懇談会理事
宮崎美紀子 東京新聞 編集局 文化芸能部部長
司会/鈴木健司 本誌シニアエディター
ライブ会場のステージに立つ歌手のバックショット
写真=iStock.com/gorodenkoff
※写真はイメージです

――本誌2018年12月号の特集で、お二人には「NHK紅白歌合戦」(以下、「紅白」)に特化した話をしてもらいましたが、今回はコロナ禍を挟んで変化をみせている日本の音楽状況、そして音楽番組の動向などを踏まえつつ、改めて「紅白」の価値や存在意義について話し合ってもらいたいと思います。 〈「GALAC」2025年10月号掲載(2025年7月22日放談実施)〉

【宮崎】今年、各局でやっている夏の大型音楽特番って、3・11の東日本大震災以降に始まったものが多い印象があります。2011年にスタートしたTBSの「音楽の日」はまさにそうで、フジテレビの「FNS歌謡祭」はもっと前からやっていますが。ライブをメインとした大型特番は、震災の後に「歌の力」を見直そうというところから始まった記憶があります。

【滝野】ライブ系の音楽番組は、TBSの「COUNT DOWN TV」が「CDTV ライブ!ライブ!」に変わってゴールデンで定着しましたし、テレビ朝日の「ミュージックステーション」は相変わらず人気があります。一方で、BSではシニア向けの懐かし系音楽番組がとても多い印象です。

【宮崎】BSはシニア層に特化することで、棲み分けがはっきりしていますよね。地上波はやっぱり若者向け。フジテレビの「ミュージックジェネレーション」とかも含めて若者向けの番組が多いと思います。

【滝野】「ミュージックジェネレーション」みたいな3世代を意識した切り口の番組は、音楽番組に限らず他局でもやっていますが、音楽番組そのものの傾向となると、ライブとアーカイブという二つの要素が主流になっているのかなと。

【宮崎】各局とも大型のライブ番組が増えているのは、いわゆるCDが売れなくなった時代を象徴している気がします。今は、一般的には知名度が低いミュージシャンが(日本)武道館を満員にするといったこともあるし、音楽がCDというパッケージ商品から体験型のコンテンツに移行していったんですね。それでいくと、テレビの音楽番組もレギュラーの音楽番組を毎週必ず見るというより、ある種の体験型番組として、ライブ系にシフトしているという見方もできます。これは最近の「紅白」にも言えることなんですけれど、大型のライブ番組で、旧ジャニーズとか非ジャニーズとかいろいろなメンバーを集めてダンスバトルをしたり、コラボをしたりするといった企画は、やはり体験型番組の典型だなと思っています。

【滝野】特に「CDTV ライブ!ライブ!」と「ミュージックステーション」は、ある程度売れている人たちを出演させることでマジョリティを担保しながら続けています。それでも、僕なんかが知らない曲も結構出てきます。配信でしか流行ってない、例えばTikTokでしか流行ってないような曲だったりするからです。

【宮崎】「ミュージックステーション」は、最新のアーティストをブッキングしようと頑張ってますね。加えて、昔から旧ジャニーズ系に強い番組だったので、同番組の特番扱いの「SUPER SUMMER FES」はファンの人たちは必ず見る。そういうコア層もちゃんとつかまえていますね。

【滝野】それに近いのが、NHKの「うたコン」です。今の主流の人たちと少し懐かしめの人たちを組み合わせて構成しています。最近は「紅白」の映像をよく流していますが、あれはやっぱりいろんな世代を取り込もうというNHKならではの戦略かなと。

【宮崎】一方で、「Venue101」のような思いっきり若者向けで、NHKとは思えないような尖った番組もやっていますね。

【滝野】そうですね。あと、「SONGS」は中高年向けでしょうが、演奏は収録ながら丁寧に作られています。

【宮崎】MCの大泉洋が出てくると、中高年向けとは思えないようなガチャガチャした感じになるのが(笑)。やっぱり、きちんと生ライブをやっている「うたコン」は貴重な存在ですね。