ドラマの撮影では、大人だけでなく、子ども(子役)も出演する。また、人間だけでなく動物も登場する。こうした場合には制約も多いので、基本的なことを知ったうえで現場に臨みたい。
撮影用カメラでシーンを撮る光景
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子役の働き方で気を付けたいこと

子役といっても、18歳未満、義務教育修了前(満15歳になって最初の3月31日より前)、満13歳未満では、労働としてのテレビ出演が許される理由に違いがある。詳細は弁護士事務所などのサイトで確認できる(例:骨董通り法律事務所)ので、とりあえずここでは基礎的なところだけおさえておこう。まず、①働ける時間帯は、18歳未満は午前5時から午後10時まで、義務教育修了前は午前5時から午後8時まで。②労働時間は、18歳未満は原則一日8時間週40時間まで。義務教育修了前は一日7時間(修学時間込み)週40時間までだ。

さて、これを実務で進める際には、ちょっと迷うこともある。それは「仕事の始まりと終わり」だ。役者さんは撮影の前に着替えてメイクをしている。遠くの現場であれば、バスに乗る集合時間はもっと前だろう。本番が終わってもそのあと着替えてメイクを落とす時間もある。では、ドラマの撮影現場での業務開始と業務終了はいつなのか?――答えは、現場到着から現場離脱までだ。具体的には撮影前に現場に到着した輸送のバスを降りる時間から、撮影を終え現場を出発するバスに乗り込む時間まで。つまり、午後8時までにはメイクを落とし着替えも終えてバスに乗り込み終わってもらわなければならない。

私がこの冬に撮影していたドラマでも、ギリギリになった日があった。夜7時を回った頃、このままのペースでは本番自体も8時を回りそう、という状況だった。まずいことに、この日の子役は人数も多く、更衣室も限られていて着替えに時間がかかる。全員が着替えてメイクを落とすのにどうしても20分はかかる見込みだ。本番自体は7時40分には終わってもらわなければならない。その旨を演出に念押しし、なんとか終わったのが7時45分。現場で名残惜しそうにしている子役と保護者たちを急かして控室に戻し、クレンジングシートを配布してメイクは各自で落としてもらうことで時間を短縮。なんとか8時までにバスに乗車してもらうことができた。

子役とのお仕事では、出演経験が悪い思い出になってしまわないようにすることも心がけたい。子役の出番は回想シーンが多く、トラウマを抱えた出来事(NHK夜ドラ「ミワさんなりすます」での、椅子取りゲームで負けてばかりの経験とか)や、大切な人との別れといった、ネガティブな場面になりがちだ。出演が理由で、学校でいじめられないか、という視点でも気を付けたい。対策になっているかは自信がないが、私の場合、現場では子役にも必ず敬語を使うようにしている。「これはあくまで仕事モードなんだ」と思ってもらうためだ。

子役は体調も崩しやすく、ケガもしやすい。トイレも近い。第一に考えるべきは子役の心と体の健康だ。ただ、私はこの点まだ手探り状態で、経験ある人の意見を聞きたいところだ。