「フジVS.ダルトン」「ホリエモン登場」ショー化したフジ株主総会報道
「もう歯を食いしばるしかないです」。フジテレビ社員の一人がこう吐露していた親会社「フジ・メディア・ホールディングス(HD)」の株主総会が6月25日、有明アリーナ(東京都江東区)で開かれ、会社側が提案した清水賢治専務=フジテレビ社長=のHD社長就任など11人の取締役選任案が可決、大株主で米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」の選任案は否決された。中居正広氏の性加害問題に加え、直近にはオンラインカジノでの賭博の疑いで社員2人が逮捕、書類送検されたばかり。紛糾の材料がそろい過ぎた総会には昨年の20倍、3364人の株主が出席し、同業他社は大取材団を送り込んだ。
この日、フジテレビは「Live News イット!」「FNN Live News α」、BSフジは「プライムオンラインTODAY」などで総会の模様を大きく伝えたが、経済ニュースの域を超えることはなく、内容も他局と変わらなかった。客観報道は大原則だが、フジは当事者でもある。にもかかわらず、自社の取り組みについて触れなかったので、どこか他人事のように映った。
「WBS」(テレビ東京)は老舗経済番組らしく、ダルトンの最高投資責任者から「企業価値向上のため(これからも)戦う」「株を買い増しするかもしれない」と対決姿勢を露わにしたコメントを引き出した。「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ)、「ゴゴスマ」(CBCテレビ)、「NHKニュース7」「ニュースウオッチ9」(NHK)、「報道ステーション」(テレビ朝日)、「news zero」(日本テレビ)、「news23」(TBSテレビ)は「フジVS.ダルトン」「堀江貴文氏登場」と、2005年のライブドアによる敵対的買収報道を彷彿させるショー化した構成で足並みを揃えた。前代未聞の総会の発端になった人権侵害に踏み込んだものは少なかった。
翌26日、日テレは国分太一氏によるコンプライアンス違反を受け、「ガバナンス評価委員会(仮称)」を設置すると発表した。一連のフジの問題は対岸の火事ではなかった。だからこそ危機感を共有し、株主総会での「フジの勝利」だけでなく人権問題も改めて問う報道が必要だった。
検証番組はゴールではなくフジが生まれ変わるための出発点
フジが生まれ変わる姿勢を自らの言葉でどう伝えるか、他局も当日報じたのが7月6日午前10時から1時間45分にわたって放送された「検証 フジテレビ問題~反省と再生・改革~」だ。前年12月末に性加害問題が週刊誌で報じられてから半年。過去の不祥事発覚から検証番組放送までの期間と放送時間、時間帯を調べると、TBSオウム真理教ビデオ問題は半年後(1996年4月)に4時間でプライムタイム▼「発掘!あるある大事典Ⅱ」(関西テレビ)の捏造事件は3カ月後(2007年4月)に1時間でプライムタイム▼「真相報道バンキシャ!」(日テレ)の岐阜県庁裏金誤報事件は半年後(2009年8月)に40分で未明だったので時間帯以外はそれほど大きな差はなかった。
ただ2023年10月に関東ローカルで放送された「週刊フジテレビ批評特別版~旧ジャニーズ事務所創業者による性加害の問題と“メディアの沈黙”」が、NHKやTBSの旧ジャニーズ検証番組に比べ及び腰だったので、今回もあまり期待はしていなかった。ところが実際見ると、意外なほど当時の上層部に切り込んでいた。日枝久相談役が辞めたからできたのだろうが、港浩一前社長主導の「性別・年齢・容姿に着目した会合」の存在などを引き出したのは驚いた。

