理不尽な相手と対立せずに自分の気持ちを伝えるにはどうすればよいか。心理カウンセラーの衛藤信之さんは「相手を責める言葉(Youメッセージ)ではなく、自分の感情を正直に伝える言葉(Iメッセージ)で対話を深めると相手と対立せずに対話できる」という――。

※本稿は、衛藤信之『傷つかない練習 つらい感情から「自分を守る」思考法』(大和出版)の一部を再編集したものです。

指を突き出すビジネスマン
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「怒り」は”期待”が形を変えたもの

僕たちが誰かに対して「腹が立った」「イライラする」と感じるその感情は突然、空から降ってきたわけではありません。

心理学では、怒りや不満は「第二感情」と呼ばれます。

では、その前にある「第一感情」とは何でしょうか?

それは、ほとんどの場合は“自分の期待”です。

たとえば、職場の上司に「話も聞かずに一方的に注意された」とき。怒りの裏側にあるのは、こんな期待かもしれません。

「ちゃんと話を聞いてほしかった」
「味方でいてくれると思っていた」
「認めてくれる存在だと信じていた」

つまり、あなたが怒りを感じたのは、単にその人が“嫌い”だからではなく、「信じていた」「頼りたかった」「わかってほしかった」という、自分の期待が裏切られたからなのです。

このように、怒り(Youメッセージ)は心の中の「悲しみ」や「さみしさ」が、形を変えて出てきたものです。

悲しむ女性のシルエット
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自分の感情を正直に伝える

その怒りの奥にある“自分の願い”に気づけたとき、僕たちは少しだけ自由になれます。

だからこそ、相手を責める言葉(Youメッセージ)ではなく、自分の感情を正直に伝える言葉(Iメッセージ)で語ってみてほしいのです。

自分の感情を正直に伝える言葉への言い換え
 「ちゃんと話を聞いてくれない」
→ 「話を最後まで伝えらないのがつらいのです」

すると相手は「なにを伝えたかったの?」

「あなたの言うことがコロコロ変わる」
→ 「期待に応えたいのに、それがわからなくて悲しい」

すると相手は「どうしたらいい」

「あなたが責めてばかりですよ」
→ 「見守ってくれていると思っていたから、驚きました」。もしくは、「安心してもらいたくて頑張ったので悲しくて」

すると相手は「もちろん安心もしているよ」

こうした言葉は、あなたの心を守るだけでなく、相手との“対立”を“対話”へと変えるきっかけになります。

自分を伝えるのは勇気です。でも、勇気ある言葉には、人の心を動かす力があります。

心理的距離を保ちながら、相手との心の橋を作ること。それが、あなたの人生を豊かにしていくのです。