トランプ米大統領を支持する人たちはどんな人たちか。立教大学文学部教授の加藤喜之さんは「人口の25%近くを占めるとされる『福音派』が挙げられる。彼らの終末論的世界観を理解しなければ、アメリカの分断は読み解けない」という――。

※本稿は加藤喜之『福音派――終末論に引き裂かれるアメリカ社会』(中公新書)の一部を再編集したものです

旗を掲げる福音派の参加者
米ジョージア州で開かれたトランプ支持派の集会で「イエスはわれわれの救い主、トランプはわれわれの大統領」と書かれた旗を掲げる福音派の参加者(2024年3月9日)(写真=ZUMA Press/共同通信イメージズ)

キリスト教的終末論の「善と悪との戦い」を実践する人々

現代のアメリカでは、複数の争点をめぐり、極めて深刻な対立が生じている。

中絶は女性の基本的人権なのか、それとも許されざる殺人なのか。公立学校で教えるべきは進化論なのか、それとも神による創造なのか。警察による黒人射殺は構造的な人種差別の表れなのか、それとも犯罪に対する正当な法執行なのか。そして、より根本的な対立として、合衆国は人種や信仰の多様性を認める世俗国家なのか、それとも建国以来のキリスト教国なのか。

対立はなぜ起こるのだろうか。

その答えを探る鍵は、意外にも宗教にある。2022年のピュー研究所の調査によれば、4割ものアメリカ人が世界は終わりつつあると信じている。特に米国の人口の25%近くを占めるとされる「福音派」では、その割合は6割を超えるという。彼らにとって、現代の政治的・社会的な対立は、終末に向かう世界における善と悪の戦いの一部として理解されているのだ。

「福音派」(“Evangelicals”という名称は、救い主イエスの到来を意味するギリシア語の「良い知らせ」(エウァンゲリオン)、すなわち「福音」に由来する。この用語は、16世紀の宗教改革以降、ローマ・カトリックと区別されるプロテスタント教徒を表す一般的な呼称として使われてきた。しかし本書で扱う福音派は、アメリカの歴史のなかで独自の発展を遂げた特殊な宗教集団を指す。