MLBにおける優勝決定戦であるワールドシリーズは、大谷翔平選手らが所属するロサンゼルス・ドジャースが優勝した。ライターの広尾晃さんは「同時期に行われていた日本シリーズよりも注目度が高かった。これにはMLB側の周到な準備があった」という――。
米大リーグ、ブルージェイズとのワールドシリーズ第7戦を制して2連覇を達成し、チームメートと喜ぶドジャースの山本由伸(中央)=2025年11月2日、トロント
写真=ゲッティ/共同通信社
米大リーグ、ブルージェイズとのワールドシリーズ第7戦を制して2連覇を達成し、チームメートと喜ぶドジャースの山本由伸(中央)=2025年11月2日、トロント

日本シリーズより盛り上がったワールドシリーズ

高市早苗新首相は、10月28日、トランプ米大統領との会談前の式典で、開始が遅れた理由を「トランプ大統領の部屋で野球を見ておりました。1対0でドジャースが勝ってます」と話し、報道陣の笑いをとった。ワールドシリーズ第3戦のことだ。

日米それぞれの野球の頂上決戦、日本シリーズとワールドシリーズは、10月下旬から始まり、ほぼ同じ日程で行われた。日本の野球ファンは、午前中はワールドシリーズ、夜は日本シリーズを観戦したが、圧倒的に盛り上がったのは、高市首相の発言が象徴するようにワールドシリーズだった。

日本シリーズが、盛り上がりに欠けていたわけではない。今や巨人を抜いて日本一の人気球団になった阪神と、パの覇者ソフトバンク、ともに勝率6割を超す強豪チームの激突である。

筆者は福岡、甲子園両球場で観戦したが、福岡のみずほPayPayドームは、虎のユニフォームを着た阪神ファンが肩で風を切って歩き、かつて見たこともないような大応援団が気勢を上げた。まさに「猛虎襲来」だった。

甲子園では、阪神ファンが寒風の中、ビールや酎ハイのカップを次々に空にして気勢を上げていた。結果はソフトバンクの4勝1敗とあっけなかったが、観客席はすさまじい盛り上がりではあった。

ソフトバンクが優勝した翌日の11月1日、福岡、関西のローカル局は、詳細に試合の模様を伝えたが、午前8時からの全国ネットの朝のニュースショーは「ワールドシリーズ一色」になった。