どんなに得意な仕事でも、締め切り直前までやる気がわかないのはなぜなのか。障害者の社会復帰を支援する就労移行支援事業所を運営する柏本知成氏は「本人が努力しても時間感覚や指示の内容がわからないこともある。そんなときも仕事がサクサク進む方法がある」という――。

※本稿は、柏本知成『ポストが怖くて開けられない! 発達障害の人のための「先延ばし」解決ブック』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
※登場する人物の名前はすべて仮名です。個人情報保護のため、一部の属性や状況についても変更しています。

夜のオフィスで疲れ切ったビジネスマン
写真=iStock.com/VioletaStoimenova
※写真はイメージです

なぜ指示が飲み込めず動けないのか

わかったはずなのに、動こうとした途端、「えっと……何からだっけ?」。

そんなことはありませんか?

佐伯ナオトさん(20代男性)は、説明を聞いている間、相づちを打ちます。けれど、席に戻った瞬間、手が止まってしまいます。その日も、

「A4の用紙を20枚そろえてホッチキスで留め、5セットずつ袋に入れて、11時までに提出する」というシンプルな作業が、頭の中で砂のようにこぼれ落ちました。

視線は机の上を泳ぎ、用紙と袋を持ったまま、固まってしまいます。

そこで、私はナオトさんが趣味でよく「落書き」をしていることを思い出し、ペンとスケッチブックを渡しました。

ペンを握った途端、ナオトさんの手は軽快に動き出し、A4の用紙を四角、ホッチキスを星印、袋を封筒マーク……と描き、線でつないでいきます。

矢印が伸びるたび、工程がまるで線路のように紙面へと描かれます。

描き終えると、今度は名刺大のカードに「A4×20」「ホッチキス」「5セットずつ袋へ」「11時まで」と、4つの要素を走り書きしました。

小さな紙に書くことで情報がピタリと収まり、「散らばっていた言葉が箱に入ったみたい」と、本人はうれしそうにしていました。

仕上げにカードを胸に当て、目を閉じ1分間だけ「頭の中でリハーサル」。

こうして「手順を体に落とし込むイメージをする」という短い儀式で、動きのイメージを内側に染み込ませました。

情報は図形にして整理
出典:柏本知成『ポストが怖くて開けられない!』(サンマーク出版)

情報は「図形」にして整理する

数日後、「午前中に資料セットを3種類、用意しておいて」と指示されました。

以前なら、依頼を受けて固まっていたナオトさんですが、迷わずスケッチブックとカードを取り出し、手順を描いて色分けをしていきました。

1分間、頭の中で作業のリハーサルを終えると、締め切り15分前には、すべてを完了させました。

「やることが“絵”と“数字”になったら、あとは線路の上を走るだけでした」

スタッフも驚く正確さ。ナオトさんの表情には、これまで見たことのない自信が浮かんでいました。

指示が上手く飲み込めないとき、また情報を整理するときには、次の3ステップをぜひ試してみてください。