※本稿は、柏本知成『ポストが怖くて開けられない! 発達障害の人のための「先延ばし」解決ブック』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
※登場する人物の名前はすべて仮名です。個人情報保護のため、一部の属性や状況についても変更しています。
なぜ指示が飲み込めず動けないのか
わかったはずなのに、動こうとした途端、「えっと……何からだっけ?」。
そんなことはありませんか?
佐伯ナオトさん(20代男性)は、説明を聞いている間、相づちを打ちます。けれど、席に戻った瞬間、手が止まってしまいます。その日も、
「A4の用紙を20枚そろえてホッチキスで留め、5セットずつ袋に入れて、11時までに提出する」というシンプルな作業が、頭の中で砂のようにこぼれ落ちました。
視線は机の上を泳ぎ、用紙と袋を持ったまま、固まってしまいます。
そこで、私はナオトさんが趣味でよく「落書き」をしていることを思い出し、ペンとスケッチブックを渡しました。
ペンを握った途端、ナオトさんの手は軽快に動き出し、A4の用紙を四角、ホッチキスを星印、袋を封筒マーク……と描き、線でつないでいきます。
矢印が伸びるたび、工程がまるで線路のように紙面へと描かれます。
描き終えると、今度は名刺大のカードに「A4×20」「ホッチキス」「5セットずつ袋へ」「11時まで」と、4つの要素を走り書きしました。
小さな紙に書くことで情報がピタリと収まり、「散らばっていた言葉が箱に入ったみたい」と、本人はうれしそうにしていました。
仕上げにカードを胸に当て、目を閉じ1分間だけ「頭の中でリハーサル」。
こうして「手順を体に落とし込むイメージをする」という短い儀式で、動きのイメージを内側に染み込ませました。
情報は「図形」にして整理する
数日後、「午前中に資料セットを3種類、用意しておいて」と指示されました。
以前なら、依頼を受けて固まっていたナオトさんですが、迷わずスケッチブックとカードを取り出し、手順を描いて色分けをしていきました。
1分間、頭の中で作業のリハーサルを終えると、締め切り15分前には、すべてを完了させました。
「やることが“絵”と“数字”になったら、あとは線路の上を走るだけでした」
スタッフも驚く正確さ。ナオトさんの表情には、これまで見たことのない自信が浮かんでいました。
指示が上手く飲み込めないとき、また情報を整理するときには、次の3ステップをぜひ試してみてください。


