アメリカvs中国の貿易戦争、再び

10月9日、中国政府は、希土類=レアアース関連技術の輸出を規制すると発表した。中国としては、米中首脳会談前に米国に揺さぶりをかけ、交渉を有利に進めたい考えがあるのだろう。

それに対して、10日、トランプ大統領は中国の措置を激しく非難し、11月1日から対中関税を100%上乗せすると発表した。米中関係の緊迫化は、世界経済にマイナスの影響を与えることが懸念される。

中国とアメリカの国旗
写真=iStock.com/rarrarorro
※写真はイメージです

10日の米国の株式市場では、貿易戦争は一段と激化するとの懸念から、株価が大きく下落した。米ドルの減価懸念や中国の金保有量の増加から、金の価格は1オンス当たり4000ドルを突破した。

米国が関税引き上げを実行すると、中国の景況感は悪化するだろう。中国がレアアース関連の規制を強化すると、世界経済を牽引する米国も打撃を受ける。

また、公明党が自公連立から離脱することで、国内の政治情勢は不安定化するだろう。政治の基盤が揺れると、景気・物価対策の実行が遅れることも考えられる。それが現実のものになると、私たちの生活にも大きなマイナスの影響が出るだろう。景気の悪化と物価上昇が同時に進むことにもなりかねない。当面、私たちは身を守ることを考える必要がありそうだ。

レアアースで米国に圧力をかける中国

今年2月、トランプ大統領はメキシコ、カナダへの25%の関税に加え、対中10%の追加関税を発表した。それに続き、4月には米国は相互関税の導入を発表し、対中関税を145%に引き上げた。

その後、5月、スイスで開催した米中協議を経て米国は対中関税を30%に引き下げた。米中両国は閣僚級の協議を開き、中国のレアアース輸出規制の解消に向け一定の合意を見出した。6月には、ロンドンでラトニック商務長官、ベッセント財務長官らが中国の何立峰副首相らと会談し、レアアースの輸出に関する枠組みに合意した。

中国のレアアース輸出規制は、自動車メーカーなど世界の企業の事業運営に甚大な影響を与えた。わが国でも、レアアース不足で生産が遅延したり、中にはストップする企業が出た。6月の合意内容は世界の企業経営者や投資家に安堵を与えた。