第三次世界大戦は起きるのか。国際政治学者の細谷雄一さんは「プーチンの侵略は許されるべきではないが、そこに至るまでの経緯は知る必要がある。そこから得られた教訓をもとに、何ができるかを考えなければいけない」という。『危機の三十年』(新潮選書)の刊行を機に、ライターの梶原麻衣子さんが聞いた――。(第2回/全2回)
細谷雄一さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
慶応大学教授の細谷雄一さん

プーチンが犯した取り返しのつかない判断ミス

――ロシアが始めたウクライナ戦争は5年目に突入しました。歴史的な視座から眺めた際に、ロシアによるウクライナ戦争はどのようにとらえられるのでしょうか。

【細谷】歴史をさかのぼってみると、18世紀初頭に大北方戦争が起き、スウェーデン帝国と帝政ロシアが戦いました。結果、それまで北欧の覇権国だったスウェーデンが敗れ、ロシアがバルト海の覇権を握ることになりました。しかし今回のウクライナ戦争で、ロシアはこのバルト海、北欧での覇権を失うことになるのではないかと考えています。

バルト海は現在、NATO加盟国で包囲されています。ロシアは本来であれば、ウクライナに侵攻することでバルト海を含む周辺地域での影響力を復活させることが目的だったはずです。そもそも冷戦時代には、バルト海はソ連の勢力圏がそれを取り囲んでいたのですが、自ら誤った戦略を選択した結果として、むしろそこでの影響力を失っているのです。それまで中立国だったフィンランド、スウェーデンがロシアの侵略に対する不安感から、NATO加盟国になってしまいました。

ロシアからすれば意図したこととは逆の結果になっているわけで、ロシアにとっても歴史上取り返しがつかないほどの致命的な戦略的判断ミスを犯したのではないかと考えています。