※登場する取材協力者の肩書きや年齢は取材当時のものです。
日本の大学を目指す「中国人専門予備校」の実態
東京・高田馬場の「一川文研」は今、日本でも有数の中国人専門の予備校として知られる。合格実績(2024年度)をみても、難関大学の名前がずらりと並ぶ。東京大学10人、京都大学5人、一橋大学10人、東京工業大学(現・東京科学大学)1人、大阪大学9人、東北大学4人、名古屋大学7人、北海道大学2人、九州大学3人、早稲田大学15人、慶應義塾大学29人といった具合だ。
だが意外にも同校が開校したのは2021年と、日はまだ浅い。授業料も年間100万~150万円と高額だが、中国のSNSなどを通じて口コミで評判が広がり、学生数は今や1200人にも上る。そのうち約3分の1は日本留学を前提に、中国現地からオンラインで授業を受ける生徒だ。
講師陣も充実し、正社員30人、アルバイト90人という陣容で日夜、受験指導に当たる。しかし開校からわずか4年で、既に生徒が1200人とは、日本留学がいかに中国人の若者の間で過熱しているかが分かる。
ある2月の日曜日、高田馬場の一川文研の校舎に向かった時もそうだった。もう夕暮れ時。休日にもかかわらず、校舎の一室にはまだ20人ほどの中国人留学生が居残り、中国人講師による日本語の補講に耳を傾け、熱心にメモを取る姿は実に印象的なものだった。
「永住権が要らないと言う中国人を見たことがない」
やや過熱感もみられる、こうした中国人の日本留学。一川文研で校長を務める李沢楠氏が、インタビューに応じた。
「ここにいる中国人留学生の多くが日本の大学を卒業した後、日本企業か、あるいは日本に拠点のある中国企業に就職します。中国の若者が、日本の大学で4年間も生活すれば、快適で、まず中国に戻ろうという気にはなりません。そして大学卒業後は日本で職を得て、大半の中国人が日本の『永住権』を手に入れようと考えます。私は、日本の永住権が要らないと言う中国人を見たことがありません」

