※本稿は、平光源『半うつ 憂鬱以上、うつ未満』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
心のブレーキが壊れると何が起こるのか
人生を道に例えると、私たちは、それぞれが1台の車。
各々の道を走り続けています。
その道のりは、順風満帆とは程遠いものがあります。
時にはアクセルを全開にして高速道路のようにスムーズに進むかもしれませんが、多くの場合、曲がりくねったあぜ道や、ちょっと油断すると崖から転落しそうになる峠、さらには霧の中を1m先しか見えないヘッドライトで進むこともあるでしょう。
そんな人生の旅路において、最も大切な装置の1つが、「ブレーキ」です。
車のブレーキがなければ、どんなに優秀なエンジンを持っていても、安全に目的地にたどり着くことはできません。
スピードを出し過ぎて崖から落ちてしまったり、カーブを曲がり切れずに事故を起こしてしまったりするからです。
同じように、私たちの心にもブレーキが必要です。
では、その役割を果たしてくれるものは一体なんでしょう。
私たち精神科医の見解では、このブレーキの役割を果たしてくれているものこそ、ここまで何度も登場している神経伝達物質「セロトニン」です。
一般的には「幸せホルモン」とも呼ばれるこのセロトニンを、我々精神科医は「心の安全装置」「心のブレーキシステム」と捉えているわけです。
怒りという感情が暴走した時、「もう無理」という思いが加速した時、絶望という重力に引きずり込まれそうになった時。そんな時に私たちを守ってくれるのが、セロトニンというブレーキなのです。
止まり方がわからない人、続出中
「忙しい」が口癖で、いつも何かに追われている人。
スケジュールがぎっしり詰まっていないと不安になる人。
「休んでいる時間がもったいない」と言って、休日も何かしている人。
あなたの周りに、こんな人はいませんか?
もしかすると、あなた自身がそうかもしれません。
「何かをしていないと不安!」
「休み方がわからない!」
「このままではいけないとわかっているのに、止まれない!」
診察室でもこんな声を毎日のように聞いています。
まるでブレーキの利かない車で高速道路を走っているようです。
しかし、それも無理はないのかもしれません。
考えてみてください。私たちは子どもの頃から「頑張れ」「努力しろ」「諦めるな」と教わってきました。
学校では競争が当たり前で、社会に出てからも「もっと成果を」「もっと効率よく」と求められ続けます。
つまり、私たちは「アクセルの踏み方」ばかり教わってきたのです。
でも、「ブレーキのかけ方」を教わったことがあるでしょうか?

