頑張ることを求められ続け、正しい休み方を知らない現代人は多い。精神科医として25年にわたり診察を続けてきた平光源氏は「『半うつ』やうつ状態から回復するには、休み方、止まり方こそが最も大切だ」という――。

※本稿は、平光源『半うつ 憂鬱以上、うつ未満』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

夜の台所にいる若い女性
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心のブレーキが壊れると何が起こるのか

人生を道に例えると、私たちは、それぞれが1台の車。

各々の道を走り続けています。

その道のりは、順風満帆とは程遠いものがあります。

時にはアクセルを全開にして高速道路のようにスムーズに進むかもしれませんが、多くの場合、曲がりくねったあぜ道や、ちょっと油断すると崖から転落しそうになる峠、さらには霧の中を1m先しか見えないヘッドライトで進むこともあるでしょう。

そんな人生の旅路において、最も大切な装置の1つが、「ブレーキ」です。

車のブレーキがなければ、どんなに優秀なエンジンを持っていても、安全に目的地にたどり着くことはできません。

スピードを出し過ぎて崖から落ちてしまったり、カーブを曲がり切れずに事故を起こしてしまったりするからです。

同じように、私たちの心にもブレーキが必要です。

では、その役割を果たしてくれるものは一体なんでしょう。

私たち精神科医の見解では、このブレーキの役割を果たしてくれているものこそ、ここまで何度も登場している神経伝達物質「セロトニン」です。

一般的には「幸せホルモン」とも呼ばれるこのセロトニンを、我々精神科医は「心の安全装置」「心のブレーキシステム」と捉えているわけです。

怒りという感情が暴走した時、「もう無理」という思いが加速した時、絶望という重力に引きずり込まれそうになった時。そんな時に私たちを守ってくれるのが、セロトニンというブレーキなのです。

止まり方がわからない人、続出中

「忙しい」が口癖で、いつも何かに追われている人。

スケジュールがぎっしり詰まっていないと不安になる人。

「休んでいる時間がもったいない」と言って、休日も何かしている人。

あなたの周りに、こんな人はいませんか?

もしかすると、あなた自身がそうかもしれません。

「何かをしていないと不安!」
「休み方がわからない!」
「このままではいけないとわかっているのに、止まれない!」

診察室でもこんな声を毎日のように聞いています。

まるでブレーキの利かない車で高速道路を走っているようです。

しかし、それも無理はないのかもしれません。

考えてみてください。私たちは子どもの頃から「頑張れ」「努力しろ」「諦めるな」と教わってきました。

学校では競争が当たり前で、社会に出てからも「もっと成果を」「もっと効率よく」と求められ続けます。

つまり、私たちは「アクセルの踏み方」ばかり教わってきたのです。

でも、「ブレーキのかけ方」を教わったことがあるでしょうか?