夢の等身大ドールを造る70歳の職人
この連載の第12回「ドールに込めた『ものづくり』の技」(http://president.jp/articles/-/9653)で紹介した、マニアの間で大好評のドール素体「オビツボディ」。その新作ができたと聞きつけ、早速、オビツ製作所を訪問しました。その新作は「オビツ150」といい、その名の通り150cm、つまりほぼ等身大のドールです。
これまでの「オビツボディ」と同様、あらゆるポーズを見た目も自然に再現できます。指先まで関節を動かすことができ、より表情豊かなポーズができるようになりました。部位によって素材の柔らかさも異なるこだわり様で、たとえば、ふくらはぎの部分は固めで、太ももは柔らかく、思わず撫で回したくなります。
「オビツ150」の価格は約20万円。なにも文句を言わずにいつでも側にいてくれる「理想の娘」のような夢の等身大ドールが、そんな安価で入手できるとは驚きました。想像どおり大量に注文が入り、発送を控えたドールを組み立てる現場では、職人の皆さんが黙々と作業に集中されていました。
このドールのパーツは、「ローテーション成型」と「スラッシュ成型」という技法で製造されます。ローテーション成型は玩具業界で唯一オビツ製作所が開発した、電気式の特殊な大型成型回転炉を使います。特殊な機械を使うといっても、温度や焼き時間の細かい調整で、厚みや硬度などのできあがり具合は変わるそうです。結局は、職人の技が必要になるのです。
その等身大ドールの成型で活躍するのは、70歳の職人さんです。昔ながらのガスの炎を使った回転炉による「ローテーション成型」で玩具を製造してきた同業他社は、最近では、炉の老朽化、注文の減少、後継者不足が原因で、廃業する事例が多いそうです。つまり「ローテーション成型」の職人は、年々減少しているのです。今では希少な職人の技を求めてオビツ製作所が探し出したのが、このベテラン職人だそうです。