「乙女ロード」男装カフェに入ってみた
池袋駅からサンシャインシティに向かう途中にある「サンシャイン60通り」。池袋で一番賑やかなこの通りには、平日でも昼夜問わず大勢の若者で溢れかえっています。この通りを抜けて交差点を渡ると、急に雰囲気が一変します。若い女性の割合が高まり、皆、大きな荷物を持ってあちこち往来しています。
そこは通称「乙女ロード」と呼ばれる地域です。そこには女性向けのアニメグッズを販売する店舗などが200メートルほどの通り沿いに集積しているので、そう呼ばれています。ただし、「乙女」と言っても、ここに集まる女性は、特にディープな趣味を持つオタク女子が多い。乙女ロードで人気の男装カフェ(女性が男装をして給仕するカフェ)を初めて訪問した時は、衝撃的でした。店の扉を開けた途端、自分は「招かれざる客」だと悟りました。女子トイレか女性専用車両に間違って入ってしまった時のような違和感とでも言いましょうか。睨まれたわけでもなく、暴言を吐かれたわけでもないのですが、店内を満たしている不思議なオーラに圧倒されたのです。
客はすべて女性で、黙々と本を読み耽っていました。男装した給仕の女の子から、昼間は男子禁制で、夜であれば女性同伴でなら入店可能だと教えてもらいました。そこで、夜に再度訪問してみると、メニューを観て驚きました。いわゆる「ボーイズラブ(BL)」と呼ばれる、美少年同士の恋愛を主題とした小説や漫画のタイトルが、メニューリストにずらりと並んでいたのです。昼間の女性客は、このBL作品を店内で借りて読んでいたのです。
BL作品を好む女性たちは、自ら「腐った女子」、つまり「腐女子(ふじょし)」と呼んでいます。そのため「乙女ロード」は「腐女子の聖地」とも言われています。ただし、BLはあくまでも創作物の中で、豊かな想像力を使って楽しむ趣味であり、必ずしも彼女たちが生身の男性同士の恋愛を好むわけではないので、ご注意を。