病児保育のプロを育てる
【田原】それをNPOでやろうとしたわけだ。NPOは普通、ボランティアです。でも、食えないからなかなか長続きしない。そのあたりの心配はなかったのですか。
【駒崎】日本でNPOというと、割烹着を着て炊き出しをするイメージですよね。でも、インターネットでアメリカの実態を調べてみたら、全く印象が違いました。向こうはウェブのデザインから違うんです。僕が経営していたITベンチャーのウェブより、ずっと洗練されていて格好いい。さらにいろいろ調べると、代表がCEOと名乗っていたり、中にはマーケティングディレクターがいるところもあって、「こりゃなんだ?」と(笑)。
【田原】すごいね。まるで普通の会社みたいじゃないですか。
【駒崎】そうなんです。興味を引かれていろいろ調べてみたら、アメリカのNPOはボランティアではなく、ビジネスの手法を使って社会問題を解決するソーシャルビジネスという形が多いということがわかりました。収益を出しながらやっていくなら長続きしそうだし、日本でもできるのではないかと思って、僕も社会起業という形でやることにしたのです。
【田原】やり始めたのはいつからですか。
【駒崎】2005年にサービスを開始しました。フリーターになったのが03年なので、準備に2年間費やしたことになります。
【田原】今はどれくらいの数の病児を預かっているのですか。
【駒崎】うちは会員制で、今はだいたい2500世帯預かっています。今までの累計の病児保育回数は、約3万回を超します。
【田原】それをどれくらいのスタッフで回しているの?
【駒崎】保育スタッフは約70人います。職種は2つあって、1つは登録しておいてもらって、出番があるときに行ってくださいという人たち。子どもはいつ熱を出すのかわからないので出番があったときにしかお金がもらえない、というのが保育業界の常識でした。ただ、それだとスタッフが食べていけない。そこでフルタイムでお給料を払って、出番がないときは本部で研修をしてもらう職種をもう1つつくりました。週4~5日のフルタイムで、17万~25万円の月給制。こうした形で病児保育のプロを育てています。