まず注意したいのは、「誰を顧客にするのか」という点だ。ターゲティングとは、対象市場やアプローチ顧客を絞り込むことなので、最初から既存客や案件が見えている見込み客のみを顧客とすればいいという考え方もある。しかし、この切り口の先にあるのは、従来の刈り取り型の営業スタイル。予算達成に直結する顧客だけを相手にしていたら、ジリ貧になるのは明らかだ。
種まき型営業を前提にすると、将来買ってくれる可能性のある人すべてを見込み客ととらえてアプローチ対象にすべきだ。「顧客とは仕事を発注してくれる人」という固定概念を取り払い、顧客というものを広くとらえる。それがターゲティングの第1歩になる。
もちろん将来買ってくれる可能性のある人すべてを顧客とすると、顧客リストには膨大な数の顧客が載ってしまう。そこで重要になるのが「攻略顧客」と「カバー顧客」の切り分けだ。攻略顧客は、文字通りこれから重点的に攻略すべき顧客。一方、カバー顧客は、案件が出てきたら捕捉できる程度の距離感を持って接する顧客だ。
ターゲティングで重要なのは、当然、前者の攻略顧客。攻略顧客の上限数は、担当エリアの大きさや営業の支援体制など、さまざまな条件によって決まる。一概に何社と決めつけられないが、実態に合ったターゲット数を設定すべきだろう。
攻略顧客数が決まれば、次は攻略顧客の選定に入ろう。選定は、拡販余地を基準にするといい。たとえばA社は毎年1000万円分の案件を発注して、自社が90%にあたる900万円分を受注しているとする。
一方、B社の発注総額は3000万円で、自社シェアは10%で300万円の受注。現在の受注額で考えると、A社のほうが額は多い。ただ、両社の拡販余地を計算すると、A社はあと100万円で、B社は2700万円。
そう考えると、A社のほうはカバー顧客として現状維持を狙えば十分。ターゲットに相応しいのは、拡販余地の大きいB社ということになる。
拡販余地については、顧客の成長性や業界・地域での影響力も考慮に入れたいところだ。いまは拡販余地が少なくても、成長途上のベンチャー企業は将来、発注額が増える可能性があるし、業界へ影響力が大きい企業は周辺への波及効果が期待できる。
いずれにしても自分の行きやすさを基準にしてはいけない。会社として攻略すべき価値があるかどうか。その1点で、ターゲットを選ぶべきだ。
(※本記事は『諦めない営業』(横田雅俊著、プレジデント社)からの抜粋です。)