2010年ごろから那覇基地が多忙に

自衛隊が初めてスクランブル発進の体制をとったのは、1958年のことです。その後の長い歴史のなかで徐々に増えていき、ピークは2016年の1168回。以降は年間1000回程度で落ち着いています。

それでも、平均すると毎日約3回、全国どこかの基地からスクランブル発進していることになります。

2000年以前は、ソ連(ロシア)の動きが活発だったため、北海道の千歳基地がもっとも忙しかったのですが、2010年頃からは中国が軍事力をつけてきたことにより南方が中心となりました。近年は全体の7~8割が沖縄県の那覇基地からのスクランブルです。

詳細を知りたい方はぜひ、防衛省のホームページをのぞいてみてください。スクランブル発進の歴史や現状を知ることができます。

忙しい基地だと経験値や度胸が伸びるが…

私が那覇基地に勤務していたのは2016年から2017年までの約2年間でした。前述したようにもっともスクランブル発進の多い年で、2016年は那覇基地だけで811回。本当に忙しい毎日でした。

若手のときに那覇勤務になると、スクランブル発進が多すぎるため、通常の訓練をする時間がありません。機体の細かいコントロール技術などの練習ができないわけですが、その分、実地経験を積むため、経験値や度胸といった部分は明らかに伸びます。スクランブル発進の多さは、戦闘機パイロットとしては、メリットもデメリットもあるわけです。

スクランブル発進したあとは、オーダーに従って任務を遂行します。

たとえば、他国の飛行体が日本の領空に向かって飛んできているとします。ある距離まで接近した時点で発進命令が出され、スクランブル発進します。

パイロットには、飛行体がどこの国の基地から発進したものか、ファイター(戦闘機)なのかボマー(爆撃機)なのか、といった、その時点でわかる限りの情報が与えられて、オーダーが出されます。