入隊後すぐは「国防」の意味がわからなかった
初めてF-15を目の前で見たとき、先輩パイロットから「戦闘機」と「国防」について貴重な話を聞きました。
日本の空を守るということはどういうことか。
国民の命を守るということはどういうことか。
国有財産を守るということはどういうことか。
自衛隊が活躍するということはどういうことか。
自衛隊の存在意義は……。
入隊直後だった18歳の私にとって、このときの先輩パイロットの話は、正直なところすべてを理解することができませんでした。
「あのとき、先輩が伝えようとしていたことが、やっとわかった」と感じたのは、自衛官になって10年経ったくらいの頃です。練習機や戦闘機といった飛行機に合計1000時間ほど乗ったくらいの時期でした。それまでありとあらゆる教育を受け、実際に経験してようやく、先輩の話を理解できたと感じたときは鮮明に覚えています。後輩に教育できるようになったのもこの頃でした。
外敵の脅威に「迅速かつ確実に」対応する
日本は島国、四面環海です。
国を守るには東西南北、360度警戒を要します。もしも外敵の脅威があるなら、上陸されてからでは遅すぎます。国民の命や国有財産を守るためには、より陸地から離れたところで抑止しなければなりません。
できるだけ国土から遠いところで、いち早く相手の意図を察知し、攻撃の意思があるなら事前に止める。そのためには、できるだけ速く、そこに到達しなければなりません。現時点でそれが可能なのは、戦闘機だけです。
だからこそ、速さと確実さを追究する。「迅速かつ確実に」――これは、戦闘機パイロットの世界において、よく使われるフレーズです。
とにかく速く目的の地点に到達する。相手が攻撃してきた場合に備えて武器を搭載する。日本を守る、という意味では、護衛艦や現在開発中の空母もそうですし、陸上では戦車もそうでしょう。どれも重要で、それぞれ用途が異なります。そのなかで、第一線で日本を守る装備、それが戦闘機なのです。