命令が出たら5分以内にスクランブル発進
戦闘機パイロットの重要な任務の1つに、アラート待機があります。
アラート待機とは、戦闘機を運用する各基地の戦闘航空団において、対領空侵犯措置命令が発せられたときに直ちに発進できるよう、24時間365日待機する任務のことです。
アラート待機につくと、まず、ブリーフィングでその日の天候などを確認し、頭に叩きこみ、かつ重要事項をメモします。メモは、いざというときに上空であわてないための用意です。このメモをパイロットは「アンチョコ」と呼びます。
アラート待機では、いつ発進命令が出るかわかりません。命令が出たら、5分以内にスクランブル発進しなければならないので、常に緊張した状態で発進準備をしています……といいたいところですが、100パーセントの緊張感を保ち続けるのは無理です。
オンとオフの切り替えが非常に重要
常に緊張していたら、精神的にも体力的にも疲弊してしまいます。むしろ、いざというときにすぐに集中、緊張できるように、待機中はリラックスして、人それぞれ思い思いに好きなことをして過ごしています。
私が編隊長として沖縄に勤務していたときは、待機所のなかで、資格取得のための勉強をしたり、雑談をしたり、トランプやゲームをしたりすることもありました。そんな最中でも、もしも緊急発進を知らせるベルが鳴ったら(消防署のようなベルが、ジジジジジッとけたたましく鳴ります)、実弾を搭載してある戦闘機に乗りこんで直ちに出動しなければなりません。
当然、緊張します。だからこそ、待機所にいるあいだは、緊張を緩めておきながら、いざというときにすぐに動ける態勢にしておくのです。
絶対に失敗してはならない命令がいつ訪れるかわからない。心の準備もできない。この感覚は、戦闘機パイロットならではといえるのではないでしょうか。