国と東京都が「発行済み株式の半分」を持ち続ける

さらに問題は、上場後も国と東京都が発行済み株式の半分を持ち続けることだ。国も東京都も大株主として経営に口を出せるわけだ。会社が重要事項を決めようとする場合、国の許認可を得なければいけない。民営化とは名ばかりで、経営の自由度は乏しい。

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国や東京都はなぜ、株式を持ち続けるのか。路線延伸計画をきちんと実行させるためなど、もっともらしい理由は付けるが、要は支配権を握って、さまざまなメリットを享受するためだ。その典型が天下りであることは言うまでもない。

東京メトロには株式会社となった2004年以来、国土交通省や旧運輸省のOBが社長や会長に就任してきた。そんな東京メトロの会長が昨年、話題になった。元国土交通省の事務次官だった本田勝氏が東京メトロ会長を退任に追い込まれたのだ。本田氏は空港施設という会社の副社長だったやはり国交省OBの山口勝弘氏を社長にするよう同社に働きかけていたというもので、国交省が天下り先を斡旋する役割を担っていたのではないかと見られた。さすがに国交省は本田氏の後任を送り込むことができず、今は会長には、副知事までのぼりつめた東京都の元官僚が就いた。

結局、こうした天下りもあって、株式を握られている間は、民間企業であって民間企業ではない半官半民のような株式会社であり続けるわけだ。

日本郵政とJR九州の明暗を分けたもの

国が株を握り続けている上場企業の典型は、日本郵政だろう。2015年に上場したが、いまだに国が34%あまりの株式を握っている。株主総会による特別決議で重要な決定をする場合、3分の2の賛成を得る必要があるが、それを国によって封じられている。もちろん、グループ会社含めて、多数の官僚OBが天下っている。

そんな日本郵政の株価はどうなったか。上場した2015年に付けた1999円が上場来高値で、それ以降、株価はそれを上回っていない。今も1300円台だ。日本郵政が株式を持ち、国が間接支配しているゆうちょ銀行も2015年の上場来高値1823円を更新できず、今もやはり1300円台で推移している。

一方で、2016年に上場したJR九州の売り出し価格は2600円だったが、その後も株価は好調で、今年も上場来高値を更新、3900円台で推移している。このJR九州は、国は株式を保有していない。もともと国は国鉄を分割民営化する際、九州は北海道や四国と並んで、独り立ちするのは難しいと見ていた。まさか上場に漕ぎ着けるとも思っていなかったのだ。完全民営化したJR九州は独自の経営戦略で業績を伸ばし、成長を実現してみせた。国くびきから脱し経営自由度を手に入れたことが成功に結びついたのは間違いない。

国も東京都も、東京メトロの株式を手離す予定はないという。

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