あなたの職場の「最年長社員」はどんな人だろうか。東京メトロ銀座線渋谷駅の最年長清掃員、畠山敬子さん(70)は「働いて苦労が少ない人生ではなかったけれど、やっぱり東京に出てきてよかった」と話す。連載ルポ「最年長社員」、第1回は「駅清掃員」——。
メトロセルビスの最年長社員、畠山敬子さん
撮影=永井浩

独立し一人で歩んで行こうと決めた女性を導いた“師匠”

駅はさまざまな人生が交錯する場所だ。

日頃は、駅頭ですれ違う大勢の人たちがいったいどんな人生を歩んでいるのかいちいち関心を持つ余裕はないが、アクシデントやトラブルをきっかけにかかわりが生まれると、突如、相手の背後に家族や勤め先の同僚が存在することを知らされる。夢や悩みを抱えたひとりの人間であることに気づかされる。駅とはそんな場所である。

佐藤静(54・仮名)がメトロセルビスで働くことになったきっかけは、いわゆる熟年離婚だった。メトロセルビスとは、東京メトロ駅の清掃と警備を請け負っている東京メトロの系列会社である。

離婚の理由や条件を詳しく聞き出すことはできなかったが、佐藤は二年前、当面の人生をひとりで生きていかざるを得なくなった。鮮やかなブルーと水色の二色で構成された制服に身を包んだ佐藤は、いまだに主婦らしい雰囲気をたたえた女性である。

「以前、パートで接客や販売の仕事をしたことはありましたけれど、清掃の仕事は初めてなので体がきついです。セルビスは本体のメトロがあって安定しているから、ここで長く働きたいのですが、それには健康管理がとても大切だと思っています」

50代になるまで主婦だった女性がいきなり自分の収入だけで暮らしていくのは心細いと思うが、ひとりの“師匠”の存在がそんな不安を払拭してくれたという。明治神宮前連絡所(明治神宮前駅、表参道駅、渋谷駅、北参道駅、代々木公園駅を管轄)に所属するメトロセルビスの最年長社員、畠山敬子(70)である。