あなたの職場の「最年長社員」はどんな人だろうか。ロート製薬の山田哲正さん(70)は、最年長部門長。新卒以来47年、薬の企画開発一筋だ。山田さんは「仕事の9割は失敗だった。だからこそ、いまの私の役目は失敗を予測することだ」という。連載ルポ「最年長社員」、第4回は「製薬会社社員」――。
話す男性
撮影=小田駿一
ロート製薬の山田哲正さん

薬を世に送り出す“伴走者”としての社会人人生

「学校を出て47年。僕はね、1個の仕事しかやったことないんですよ。営業の数字の計算もできないし、工場でモノづくりをしたこともない。ただひたすら、薬の企画開発一筋。でも、全然飽きることはないんですよ」

穏やかな笑顔を見せながら山田哲正さん(70)は話す。背筋がスッと伸びた立ち姿が若々しい。ロート製薬先端技術研究室の室長だった2012年7月に定年延長し、契約社員になった。その後、再生医療研究企画部の立ち上げとともに部長に。18年6月に取締役に昇進した。

部門長として最年長となるが、担当するのは最先端、いわゆる新規事業である。「社内ではニックネームで呼び合う」という同社のルールに則って、20代の社員からも「てつさん」と親しまれる。

山田さんのキャリアは、1973年に名古屋大学農学部を卒業して入社した興和からはじまった。「バンテリン」「キューピーコーワ」シリーズなどのロングセラー商品の企画開発を担当した。

医薬品の開発は、機能性はもちろんのこと、新商品のコンセプトづくりから、製剤化、安定性や安全性の研究、臨床試験、製造と、通常の消費財より格段に多く複雑な工程を要する。山田さんはその一連のプロセスを設計し、各部門の調整役となる。いわば、薬を世に送り出す“伴走者”としての社会人人生を送ってきた。

「当時の製薬業界は、商品開発のノウハウも熟していなかったから、細かく指導してくれる先輩もいない。イチから自分で考えないといけなかったんですよ」