キャリアを積み、私生活も充実している。なんとなく自分でも人生の形が見えてくる40代。『オタク中年女子のすすめ #40女よ大志を抱け』(プレジデント社)が間もなく発売になるコラムニストの河崎 環さんは、想定できる着地点に落ち着くのではなく、ここでもう一度冒険してみようと提案する――。

妙なエネルギーに満ちた年齢の女たちへ

40代のあなたが目の前に見る光景は、一面のお花畑か、エバーグリーンの草原か、それとも荒野や砂漠だろうか。

オタク中年女子のすすめ』とは、なかなかのタイトルである。実のところ筆者でさえ、今後「オタク中年女子の著者」と呼ばれる未来を受け入れるのに、ちょっとした勇気を要した。

同じプレジデント社から出た1冊目のエッセイ集が『女子の生き様は顔に出る』というタイトルで、当時の連載の作風をそのまま反映してわりと固めの社会派のはずだったことを考えると、そこから「オタク」、しかも容赦のない「中年女子」になろうとすすめる方向へと舵を切ることになるとは、なんて野心的な試みなのかしら。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/courtneyk)

だがもちろん、ウケを狙ってこんなタイトルにしたわけではない。どちらかというと主となるメッセージはサブタイトルの「#40女よ大志を抱け」にあり、この本は40女という言葉から想像されるような、「妙なエネルギーに満ちた年齢の女たち=『妙齢』の女たち」へ、

「あなたの努力家で真面目で几帳面で整った人生に、ちょっとしたほころびを生じさせてみませんか」

と、冒険をそそのかすために捧げるものである。

40代は人生で最も苦しい時期⁉

40代って、それまでどんなに努力を重ね、順調に走ってきた女でも、一度片膝をつく時期なのかもしれない。そしてそこで私たちが闘うのはシワでも脂肪でもどこかの仮想敵でもなく、「結論の出つつある自分」なのではないか。

そう思ったのは、テレビ局アナウンサーやキャスターとしてキャリアを持つ二人の女性へのインタビューがたまたま連続した2018年の夏。インタビュー記事を掲載する媒体も主旨もそれぞれ全く違ったものの、70代とアラフィフ、世代の違う二人の女性放送人がキャリアを振り返り、「最も苦しんだどん底の時期は40代前半だった」と異口同音に語るのを聞いて、多くの視聴者がテレビ画面上で知る、二人の凜とした「成功者」の足元から濃く長い影が伸びているのを見た気がした。

詳しくは書籍収録の書き下ろしエッセイ「女40代の挫折〜放送人たちの光と影〜」でお読みいただきたいが、二人の女性放送人が40代で具体的に向き合ったものは、仕事面では「求められる役割の変化」、そして私生活では「家族の問題」だった。

テレビの世界の人間でなくたって、40代での環境の変化にあれこれ思い当たるところはあるだろう。状況が変わる。自分の中身も変わってくる。その時、他人よりもまず全ての感受性と活動の主体である「自分と」どう折り合いをつけ、次のどんな地平を目指すのか。